日本学術会議の臨時総会が9日に開かれ、声明「日本学術会議のより良い役割発揮に向けた基本的考え方-自由な発想を活かした、しなやかな発展のための協議に向けて-」が採択された▼現在、政府の有識者懇談会で学術会議がその機能を発揮するために必要な制度改革案が議論されている。そこで内閣府が示した法人化案について、5つの条件をクリアしなければ、法人化には反対するというのが今回の声明の要旨だ▼法定事項は最低限にして、内部で多くのルールを決められるようにすること、会員選考等について自主的・自律的に行えるようにすること、政府への勧告権等の維持、政府からの安定的な財政支援という4項目に加え、そもそも法人化には行政コストがかかりすぎるので必要ないのではないかという論点である▼総会で内閣府の担当者が説明した内容が正しければ、4つの条件は満たすことになるが、学術会議には「信用できない」という根本的な不信感がある。これまでの経緯(会員任命拒否や20年で35%の予算減など)や国立大学法人化で予算が削られたことなどを考えれば当然とも言えるが、このままでは本来の活動にも支障を来してしまい(助言機能などは3年間で既に低下傾向)、国際的レピュテーションも低下しかねない▼任命拒否問題も本質的には重要ではあるものの、対立したままでは前に進めないのも事実だ。そのため、内閣府には来年度予算で、学術会議には前向きな議論と提言でそれぞれ結果を出すことが、信頼関係再構築の第一歩になるだろう。
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