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コラム・素領域

2024年1月19日号

素領域

顧みられない熱帯病(NTDs:Neglected Tropical Disease)は公衆衛生管理が困難な主に熱帯の貧困地域に蔓延する疾患群で、WHOによれば世界で10億人が罹患し、16億人が介入を必要としている▼3大感染症(エイズ、マラリア、結核)と比べて世界から関心が向けられず十分な対策がとられてこなかったが、1997年のG8北海道洞爺湖首脳宣言を経て、大きくは2015年の国連サミットでSDGsが採択されたことで改めて認識された▼NTDsとしてこれまで、デング熱・チクングニア熱、狂犬病、トラコーマ、ブルーリ潰瘍、風土病性トレポネーマ症、ハンセン病、シャーガス病など20疾患に加え、昨年12月にはカンクラムオリスまたは壊疽性口内炎を含めることが決まり、現在は21疾患が指定されている。WHOは制圧、予防、撲滅のための2030年までの目標とマイルストーンを設定したロードマップを21年に発表している▼日本でも複数の大学等研究機関が治療や予防のための研究を継続している。例えば長崎大学が、開発したスクリーニング系を用いてDNDiなどとシャーガス病の新規薬剤開発のための共同研究を展開。また同大はJICAの支援でボリビアで同疾患の母子感染対策の向上を目指したプロジェクトを今年から開始する▼世界的な注力の甲斐あって、昨年1月に発表されたNTDsに関する世界報告書では、20年から21年に介入を必要とする人の数は8千万人減少し、22年だけで8カ国が少なくとも1つの疾患を制圧したという。1月30日は「世界NTDの日」とのことで関係団体によるイベントも予定。さらなる国際協力のもとでの研究あるいは予防活動への支援が期待される。

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