経済安全保障分野におけるセキュリティ・クリアランス(SC)制度に関する有識者会議が、最終取りまとめを行った▼SC制度は、政府が保有する安全保障上重要な情報として指定された情報(CI:Classified Infomation)にアクセスする権限を、信頼性を確認した上で与える制度。これまでの制度では、政府関係者や防衛関係者などが軍事技術などの特定機密情報を扱うといったことに限られていた▼ISC(International Science Council)が指摘するように、最先端の科学や技術のマルチユース性は高まっており、軍事転用可能な技術を判断することは難しくなっている。また産業技術総合研究所の研究員が中国企業に技術情報を流出させ、逮捕されたように、経済分野での情報管理の強化も求められている▼各国では、幅広くCIを設定し民間企業の従業員にもSC資格を与えている。特定の研究課題で国際共同研究を行う場合、SC資格を持っていない日本の研究者は参加できない。民間ビジネスも同様だ▼最終取りまとめでは、対象となる情報を各省庁が指定することや、SC資格を与える人物の調査を一元的に行い、組織を移っても資格を継続できること、情報を取り扱う施設のクリアランス、漏洩時の罰則などについて考え方を整理した。政府は今国会に関係法案を提出する▼SC制度が導入されると、研究現場はどう変わるのか。国立研究開発法人の研究者の一部がSC資格を取得することになる一方、大学については、施設クリアランスの取得が難しいため、研究者は企業や国研とのクロスアポイントメントにより、大学外で特定の研究活動を行う必要がある。国際競争に勝てる運用が必要だ。
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