警察官などを名乗る男がインターネットバンキングを悪用し、千葉県の70代の女性から約2億5000万円もの大金を盗んだ特殊詐欺事件が先日ニュースになっていた▼どうしたらこれほどの大金をだまし取ることができるのかと思うが、怖いものである。近年、こうしたインターネットバンキングを悪用した不正送金事件が急増しているようだ。金融機関などを装った偽メールを送り付けたりマルウェアに感染させたりして個人情報を盗み、口座から不正に引き出しや送金をするなどしてお金をだまし取る手口である▼総務省・警察庁・経済産業省が、毎年の「不正アクセス行為の発生状況およびアクセス制御機能に関する技術の研究開発状況」を公表している。今年は3月14日に公表した。そのうち都道府県警察から警察庁に報告された不正アクセス行為の発生状況(認知・検挙状況など)によると、2023年には6312件が報告された▼そのうちインターネットバンキングでの不正送金などは5598件にものぼった。前年の22年は1096件(不正アクセス行為は2200件)であった。同様に21年は693件(同1516件)、20年は1847件(同2806)件、19年は1808件(同2960件)であり、過去5年間では23年が飛びぬけて増えた▼一方、不正アクセスにより利用されたサービス別の検挙件数を見ると、インターネットバンキングの検挙数は非常に少ない。23年は29件、22年は17件、21年は96件、20年は12件、19年は14件しかない▼便利なサービスでも、目に見えない犯罪者に都合の良いサービスであっては困る。
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