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コラム・素領域

2024年4月26日号

素領域

次世代放射光施設「ナノテラス」の本格稼働により、日本の研究力と国際的地位の向上、さらには産業振興にもつながることが期待される▼ナノテラスは、放射光施設としては割とコンパクトな170㍍×245㍍という規模でありながら、世界最高性能を実現するために様々な技術が盛り込まれている。例えば、光速近くまで加速するのにスウェーデンの施設では300㍍の距離が必要だが、ナノテラスでは110㍍の線形加速器で同じ性能を実現している。その他、放射光を発生させる機器にも工夫が凝らされている▼こうした最先端技術による高度化は素晴らしいことだが、ナノテラスで最もイノベーティブな取り組みの一つが、放射線管理区域を大幅に減らし、多くの利用者が実験や計測を行う部分が管理区域から外されたことだ▼通常、放射線管理区域内で放射線発生装置を取り扱うためには、6カ月ごとの電離健康診断、毎年のRI教育の受講、被曝線量管理が必要だ。従来の放射光施設は蓄積リングの周りの実験ホール全体が放射線管理区域に設定されているため、他分野の研究者は気軽に実験できなかった。ナノテラスは、ハッチを除く実験ホール全域が非管理区域であり、実験への参加が非常に容易になった▼ハッチ壁と局所遮蔽による効率的な遮蔽設計など、駆体コンクリートには様々な工夫がなされているが、それらに加えて、2年に及ぶ原子力規制委員会との話し合いによって管理区域の大幅削減が実現した。国内初の快挙だ。既存の放射光施設を改造しても同様の非管理区域設定は難しいという▼研究を阻害する要素は様々なところに隠されている。こうした取り組みを評価し促進することが必要だ。

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