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コラム・素領域

2024年5月10日号

素領域

総務省消防庁は今年の「夏期における熱中症による救急搬送人員の調査」を5月1日から開始した。搬送人員の実態を関係機関に情報提供することで熱中症予防の普及啓発活動の推進に貢献すると共に、国民の生命と安全を守ることを目的としている▼参考までに昨年の5月1~7日の報告をみると全国で495人が搬送された。半数は高齢者で、そのためだろうか、発生場所の多くは住宅で約31%を占めている。次いで屋外が約22%と続く。年間(令和5年5~9月)を通しての搬送人員は約7万1千人。初診時の傷病程度は67%が軽症であるものの約2%は重症で、不幸にもその後、死亡に至った人も107人(0・1%)いた▼熱中症による中枢神経系後遺症の発生要因を解析した2011年の昭和大学医学部の研究グループによる報告では、重症例のうち1・5%(22例)に中枢神経系後遺症が認められた。内容としては、重複したものも含めて高次脳機能障害15例、嚥下障害6例、小脳失調2例、失語および植物状態が各1例で、こうした症例では来院時に既に重度の意識障害、高体温などが認められ、体を冷ますまで長時間を要したという。この解析は日本救急医学会熱中症検討特別委員会が行った実施年が異なる2つの症例調査について行われ、重症例のうち後遺症がなく生存した割合はそれぞれ約11%、約25%で、重症例の危険性がよくわかる▼環境省は今年度の暑さ指数(WBGT)と「熱中症特別警戒アラート」「熱中症警戒アラート」の情報提供を4月24日開始した。アラートをメールで配信してくれるサービスなどもある。熱中症の初期症状は気付きにくく、高齢者では一気に症状が進行することもある。お気を付けください。

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