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コラム・素領域

2024年8月23日号

素領域

世界における日本の研究者の存在感が薄くなっていることは、トップ10%論文の世界順位にも現れているが、この問題はより多くの課題を内包している▼文部科学省が6月に公表した国際研究交流の概況によると、2022年度の海外派遣研究者数は5万7218人で、コロナ禍前の3分の1程度まで持ち直しているが、そのうち5万3973人が30日以内の短期で、30日以上の中長期は3245人と相変わらず少ない。これは海外で同じ釜の飯を食うような友達を作る機会が減っているということだ▼また国際的に主要な雑誌のエディターやレフェリーに日本人が参加しなくなっている。ある研究者は「10年前は日本人の名前がちらほらあったが、今ではほとんど見ない」という。主要雑誌の審査に関わることは、本当の最先端の情報に触れる機会であり、同時に何が正しい情報なのかを選ぶチャンスでもある▼東京医科歯科大学の岡澤均教授のグループは20年以上前にグルタミン病原因タンパク質として、PQBPを発見した。しかしその後、海外の研究グループが核小体構成成分の質量分析から、同じタンパク質をNOLと名付けたことで、NOLの方が有名になってしまった。似たようなことは、海外の学会の場でもよく見かける。日本の研究者グループが発見したことを、あたかも自分たちが発見したことのように紹介し、その上でなにかを発表するというものだ。日本国内の学会であれば、お互いが何をしているのか知っているので、こうしたことは起こらない▼日本人の性質もあるが、近年の環境要因が大きい。基盤的経費、研究時間、ポスト、評価など、多くの課題を俯瞰的に見て解決する必要がある。

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