厚生労働省は、2018年度中の全国212カ所の児童相談所の相談対応件数が過去最多の15万9850件(速報値)に上ったと8月発表した。この件数は年々増加を続けている。一方で、この増加は虐待への関心の高まりや制度改正を反映しているとも考えられ、相談経路は警察等が約半数を占めている。17年度の数値ではあるが、虐待死事例は65件(心中含む)。07年度の142件をピークに、近年は約70~80人以下で推移している▼児童相談所の設置は児童福祉法に基づき、各都道府県と政令指定都市に最低1件が義務づけられているが、相談件数や保護件数の増加に伴い、設置を増やす動きもみられる。政府は20年度までに、児童福祉司を約2千人増加させ、約5千人程度の体制整備を目指している。ただこれでも担当者1人あたりの担当相談件数は40~50件となっている▼児童相談所の業務の効率化も大きな課題となっている。ほとんどの児童相談所は紙媒体で相談案件を管理しているため、情報共有が困難だという問題がある。対象児童が転居した際に、転居先との担当児童相談所との連携もとりにくい▼産総研はこのほど、三重県と共同で、AIを活用することで新たに入力された新規相談に対し、虐待の重篤度、将来的な再発率、一時保護の必要性、対応終結までに要する日数といった指標を瞬時に予測し提示する業務支援システムを開発。実証試験を行っている▼問題は、過去の膨大なデータの電子化作業とのことだ。しかしそれが解決できれば業務の効率化、ひいては子供の人生を救うことにつながるのだ。実用化が期待される。
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