ACE受容体をご存じだろうか。この働きが今、全世界で拡大する新型コロナウイルス感染の防御の鍵を握る存在かもしれないのだ▼そもそも受容体とは、生物の体にあって、外界や体内からの刺激を受け取り、情報として利用できるように変換する仕組みを持った構造のことである。我々の口腔内には、ウイルスレセプターと呼ばれるウイルスが吸着しやすい受容体がいくつも存在している。新型コロナウイルスは、ACE2受容体という細胞表面に発現する酵素に結合して体内に侵入してくる。海外の研究報告では、ACE2受容体は、口腔内の粘膜に多く発現しているとの指摘もある▼新型コロナウイルスが最初に侵入する細胞が上気道(鼻腔、咽頭、喉頭)の粘膜の表面に存在するものとなる。最初の症状で、新型コロナウイルスが上気道にとどまっているうちは、軽い風邪のような症状が現れる。その際、自然免疫を担うNK細胞がウイルスと闘っているため、37・5度Cの発熱が1週間程度続く。軽い状態であってもウイルスはどんどん増殖しているので、この間に多くの人にうつしてしまう▼ACE2受容体が現れるとウイルスを肺細胞内部へ侵入させる働きをする。しかも、ACE2受容体は、炎症が広がるほど多く発現する。逆に言えば、炎症が起こった際に細胞を守る働きがあるため、炎症があると増えるのである▼いよいよゴールデンウイークに突入となった。拡大する新型コロナウイルス感染を防ぐためには、3密(密閉空間、密集場所、密接場面)を避けること▼そして日頃の手洗い、うがい、マスクが欠かせない。プラス、口の中を清潔に保つことも忘れずに。
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