科学技術の進歩に寄与し
豊かな社会発展に貢献する
唯一の専門紙です。
毎週金曜日発行

TOP > コラム・素領域一覧 > 2023年3月17日号

コラム・素領域

2023年3月17日号

素領域

ロシアのウクライナ侵攻は1年を過ぎても、いまだに終結への道が見えないでいる。その影響で、石油などのエネルギー価格や、様々な食料品の原材料になっている小麦の価格が世界的に高騰している▼それが電気料金やガソリン価格、食料品などの値上げにつながり、人びとの日常生活に影響が及んでいる。日本は化石燃料資源が乏しく、エネルギー源となる石油や天然ガスの大半を海外からの輸入に依存している▼様々な食品の原材料に使われる小麦は、昭和10年代には自給率(重量ベース)が100%を超えて輸出している時代もあったが、今では自給率15%程度(2020年度)となっており、海外依存度が高くなっている▼そうした状況を考えれば、ロシアのウクライナへの軍事侵攻が、日本のエネルギーや食料の問題にまで及んできていることが理解できる。石油や天然ガスなど国内にほとんどない資源を輸入に頼るのは仕方ないだろう▼しかし、かつては自給率100%を超えていた小麦のような食料は、もっと生産量を上げる必要があるだろう。食料問題は今後、地球規模での人口増加や温暖化などによって、より大きな問題になっていくと予想される▼戦争ばかりでなく、温暖化に伴う大干魃や巨大台風などが発生して、世界的な影響を及ぼすような農産物生産の被害が出れば、日本のような輸入国は深刻な事態に陥る心配がある▼安心・安全に世界からモノが買える時代は、もう終わりを迎えているのかもしれない。ウクライナの危機は、無慈悲な戦争の恐ろしさや悲惨さなどを世界に伝えている▼しかし、そればかりではない。一国の安全保障問題を、エネルギーや食料といった、より身近なところから、もっと真剣に考えることの重要性も訴えている。

  • facebook
  • twitter
  • Google +
  • はてなブックマーク
  • LINE
  • Mail
THE SCIENCE NEWS
  • facebook
  • twitter
  • Google +
  • はてなブックマーク
  • LINE
  • 購読申込
  • メール