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コラム・素領域

2018年11月16日号

素領域

よく言われることなのだが「猛暑の年の冬は厳冬になりやすい」という。今年はどうだろうか。気を付けなければならないのが寒さ対策である▼猛暑の時は熱中症、厳冬ならば凍死の危険がある。凍死とは、体熱の放散が熱産生を上回り、体温調節機能の限界を超えて全身の機能障害に陥った結果、死に至ることである。当然ではあるが高温の時に限界を超えれば、熱中症となるわけである。ちよっと意外かもしれないが、一昨年の統計によれば、中高年男性(40歳から64歳)で凍死した人は157人。これはその年の熱中症による死者の2倍近いそうだ▼人間は体温が36度から37度そこそこの状態で活動的になる。それが35度を下回って低体温症になると、筋肉がこわばり反応が鈍くなる。そして思考能力も判断力も落ちていき、その状態がさらに進む。30度以下にでもなれば、意識を失い、呼吸や心拍が弱くなり、昏睡状態に陥って最終的に死に至ることになる▼このような状態になるのは、真冬の登山や水難事故の時に身体が冷やされて起こる遭難型低体温症を想像してしまうのだが、これも意外なことに一昨年のデータでは、室内での事故による都市型低体温症によるものが半数にも及ぶとか。寒冷環境から脱出できない状態で低体温症を引き起こしてしまうのだ▼例えば、暖房も付けずに研究に夢中になり、薄い布団や毛布で眠り込んでしまうと取り返しのつかないことになるようだ▼ところで、気象庁の予測によると今年の冬は、エルニーニョ現象の影響によって日本近海の水温が上がり、暖冬になる傾向だそうだ。だからといって油断してはならない。筆者もそうだが、特に60歳を過ぎた人は、基礎代謝量が落ちてきて体温調節がうまくいかないことが多い。くれぐれも、要注意である。

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