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コラム・素領域

2019年2月1日号

素領域

加藤セチという女性がいた。保井コノ、黒田チカに続く日本人女性としては3番目の理学博士で、女性で初の理化学研究所主任研究員である▼明治28年、山形県の裕福な家庭に生まれたが、生家の破産などにより山形県立鶴岡高等女学校を中退して、山形県女子師範学校(山形大学)に移り、卒業後は小学校教師として働き、その後、東京女子高等師範学校(お茶の水女子大学)に進学する。さらに高等女学校の教師を務めながら、北海道帝国大学に入学。結婚後は理化学研究所に勤務し、特に吸収スペクトルによる化学の研究に貢献した▼理研は優れた若手研究者にPIとして独立して研究する機会を与えるため、理研白眉制度を実施している。数理科学を含む自然科学全般および人文社会科学との境界領域が対象分野で博士号の有無は不問。任期は最大7年、月額91万円の給与と1000~4000万円の研究費が与えられる。募集定員は3名▼この制度に今年度公募から女性限定枠「加藤セチプログラム」(1名)が導入された。ただし、男女関係なく同じ基準で選抜し、基準に達しなければ採用ゼロもあるという前提での公募が行われた。その結果、応募者数に占める女性の割合は9・7%から22・2%まで上昇した。小谷元子理事によると「単に数が増えただけでなく、女性応募者のレベルも明らかに上がった」という。女性1名、男性2名が採用された▼条件は全く同じであっても女性限定公募という手法が、心理的な障壁を下げていると考えられる。人口減少社会においては、男女関係なく優秀な人材が活躍する環境を作らなければ、日本の基礎的な力は低下してしまう。政府や大学でも、心理的障壁を下げる、ほんのちょっとの工夫が求められている。

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