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コラム・素領域

2017年5月26日号

素領域

かつて造船王国だった日本は、前世紀末に近隣国に建造量トップの座を奪われた。近年、業界内の統合、再編等で持ち直しつつあるが、依然として建造量は世界3位だ。今後、高機能、高品質の船を造る日本に顧客が戻る可能性はあるが、トップ奪還は難しい▼日本の造船業の不振の根には、現在でもニーズが高い特殊な船舶(例えば高速船やLNG船など)をオリジナルで造れなかったことなどがある。1980~90年代には、国や民間で、画期的な高速船を造るための研究開発が行われた。昨年度まで神戸海洋博物館に展示されていた超伝導電磁推進船「ヤマトⅠ」、高速船テクノスーパーライナー(TSL)の実験船「疾風」(いずれも技術転用の問題から最近国内で廃棄処分された)は、まさに造船業界の危機を救うために開発されたものだ。疾風は、ジェットフォイルと同じ全没型水中翼船だったが、この技術が民間転用されることはなかった。一方で、米国・ボーイング社のライセンス生産(川崎重工業製造)で造られたジェットフォイルは国内の離島航路で現在も活躍している▼しかしながら就航から20年以上たっている船も多く、老朽化が問題になっている。最近、ストック分の推進システムを利用することで、国内では25年ぶりにジェットフォイルが川崎重工業に発注されるとの報道があった▼今後、数十年先も生き残っていく船舶の開発が必要だ。例えば、持続可能な発展に資する、他国にまねできないレベルの省エネ、ゼロエミッションなどの日本の得意技術を組み込んだ船舶を開発してはどうか。今度は轍を踏まないようにしっかりした産学官プロジェクトを立ち上げる必要があるだろう。

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