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コラム・素領域

2017年3月24日号

素領域

運営費交付金は毎年減らすが、効率的にイノベーションを起こして、社会に資する研究をしろ。政府はなかなかの難題を国研や大学に提示している▼先日、先端研究設備・機器を有する研究機関の実務者が集まるワークショップに参加してきた。実務者間で研究機関個別の課題や共通の課題を共有するとともに、海外事例と国内との違い、設備や機器に応じた運用戦略、機器開発時の企業との関係、技術専門職の認定制度など多岐にわたる議論が行われた▼文科省では、先端研究基盤共用促進事業で、SPring8など最先端大型施設だけでなく、これまでバラバラに管理されてきた研究設備・機器を研究組織がマネジメントする体制を整える支援を開始した。しかしながら現場では簡単に共用を推進するための取り組みが進んでいるわけではない。人的な問題を含めた運用管理体制の整備、有用な設備・機器としてのアピール、利用効率の向上、どのように組織内外のバランスを取って運用するかなど難しい舵取りが必要とされている▼ある大学は予定の空いている機器や、技術専門職員を検索できるユーザーフレンドリーなシステムを導入。また、技術ランクを設定するなど、技術専門職のキャリアパス構築を検討し始めている。全国に数台しかない機器を保有する機関では、受託計測について企業と協働し、高度な分析が必要となる試料だけ、この機関の分析装置を利用するという、企業とのすみ分けをした運用をしている▼設備・機器の共有化により、独立して研究室を主宰するようになった若手が最先端機器を利用できる機会が大幅に増える。日本の「あるものは無駄なく使う」という精神が表れた方針だが、その節約分を新たな設備・機器、技術者の育成に投資することは必須だ▼なお山中伸弥教授は、設備・機器の共用が進んでいた奈良先端科技大で研究室を立ち上げ、iPS細胞の開発に成功している。

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