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コラム・素領域

2017年3月17日号

素領域

1㍍以上に育つ海ぶどうは、実は単細胞生物である。先日、沖縄科学技術大学院大学のサイエンスカフェで30代の若手研究者から話を聞いて初めて知った。また、藻類に対する遺伝子のノックアウトやノックインなどは非常に難しいのだという。海洋生物学の専門家であれば常識であるこうしたことも、分野が少し異なるだけで知らないことは多い▼一方、計測技術や計算科学、操作技術の発展によって、分野間の距離は縮まりつつある。例えば生体内の様々な現象は化学反応として捉えることができるようになり、シミュレーションの世界では分子動力学計算を用いて、生体内分子の形状や機能を予測できるようになった。さらにダイヤモンドNVセンタを利用することで、細胞内の微小な温度変化や流れを正確に計測できるようになり、シミュレーションは細胞を構成する原子の電子状態をパラメータに盛り込み、より正確な予測を可能にしている▼しかし、観察対象が小さくなればなるほど、得られるデータは膨大なものとなり、それをどのように解釈するかが重要になる。いわゆるビッグデータというやつだ。そこで発展してきたのが人工知能である。最近はやりのディープラーニングは膨大な学習データから、特徴量を抽出し、既知の情報と結びつけることで一定の確かさで判断を行う。ただし、未知の現象を捉えることや少ないデータで正確な判断を行うことは難しいため、新たな手法の開発が進んでいる▼自然界にはまだまだ多くの不思議が残されており、それらは人間の地道な努力の結果によって解き明かされていく。春の学会シーズンである現在、様々な場所で多くの若手が議論を行っていることだろう。研究室から出て人と交流することは最も基本的なことだが、新たな発見の近道であろう。

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