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コラム・素領域

2019年10月25日号

素領域

科学技術基本法では、科学技術を「人文科学のみに係るものを除く」と規定している。ここでの人文科学には社会科学も含まれている。一方、生命倫理やELSI、AIの社会受容性など、人文科学が関わる時には「のみ」ではないため、科学技術に入ってくる▼内閣府では現在、科学技術基本法の改正に向けた議論を行っている。人文科学を含めることと、イノベーションを盛り込むことが大きな論点だ▼人文科学が科学技術基本法で規定する科学技術に包含されると何が起こるのか。まず、科学技術関係経費を計算する際、現在、抜かれている人文社会系教員の人件費が入ってくるため、見た目の予算が増える。実際の研究費はというと、現状のシステムでは科研費が増えない限りは増えない。では、なぜ人文科学を入れるのか▼日本学術会議は10月16日の総会で特別企画を実施。AIによる政策提言を一つの例として、今後、学術に起こりうる変化、社会と学術の関係の変化について討論を行った。AIというツールが発達したことで、民主主義的意思決定プロセスが、これまでの政治家を介した間接プロセスから、市民と政治的意思決定を直接結びつけることができるようになった。一方で、AIがその判断に至ったプロセスは人間には理解できない。AIによる判断が正しいかどうかは、人間が最終的に正しいと判断するからこそ、正当性が生まれる▼個人がデータ化され、AIが判断するといった社会システムの構築が進む中では、人間とは何か、個人とは何なのかといった、根本的な問いかけが重要になる。だからこそ、人文科学は科学技術の一翼となりうる。この時代の要請にどこまで応えられるかは人文科学研究者にかかっている。

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