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コラム・素領域

2020年2月21日号

素領域

新型コロナウイルスの感染が新たな段階に突入した。中国への渡航歴がない人や、旅行者と接触したことがない人などにも感染者が出てくるという国内感染の拡大だ▼政府は、新型コロナウイルス感染症対策本部を開催し、今年度予算の余剰分や予備費を投入するなど、国内感染対策、水際対策、産業対策などを実施している。感染症研究所や地方衛生研究所のPCR装置増強などによる検査体制の強化や血清抗体診断方法の開発などを盛り込んでいるが、どうも後手後手に回っている印象が強い▼日本ではこれまでに多くの研究成果が生まれている。その中で例えば、東大の野地博行教授らが開発した1分子デジタルイライザを使えば、未発症段階でのインフルエンザ感染を確認できる。もちろん新型コロナウイルスに対応するためには抗体等の開発が必要だが、こうした成果の実用化を一気に後押しして、今回だけでなく次の危機にも対応できる体制を構築することが必要だ。しかし、医療機器や治療薬が承認されるまでには、膨大な書類とPMDAの審査、臨床試験などで数年以上の時間がかかるのが現状だ▼新型コロナウルスが急激に拡大していることからも分かるように、今後も新たな感染症が生まれて、急激に蔓延していくというのは、現実的な課題だ。こうした状況に対して、現実の日本のシステムでは対応できていない▼緊急対策(研究開発)の文書には、健康・医療戦略室、厚労省、文科省が名を連ねているが、経産省は入っていない。産総研の開発した迅速ウイルス検出機器のコロナ対応は、国内感染症対策の側方支援と位置づけられ、本流の診断法開発には入っていないのだ。つまらない省庁の縦割りで診断が遅れれば、感染はより拡大する。真の司令塔が求められる。

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