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コラム・素領域

2020年8月28日号

素領域

かつて、大学院博士課程に進学し学生ローン(奨学金)で借金を重ねながらも、アカデミアのポストを得ることができれば、借金は帳消しになり、自分の興味に基づいた研究ができるという時代があった▼現在は奨学金返還免除もなくなり、若手ポスト自体も少なくなったためアカデミックキャリアは非常に狭き門となっている。しかも、研究設備や人間関係といった研究環境についても、大学の研究現場に魅力がなくなっていることが、異業種企業3社が自社の博士後期課程修了者に行ったアンケートで明らかになった▼イノベーションの源泉である研究について国際競争は激化し、中国が世界1位になるなど、国際的な環境は大きく様変わりしてきているが、一部の研究者には、いまだに「大学院生は無料の労働力」といった意識が残っている。もちろん、多くの研究者は学生を一人前の研究者となるよう指導しているが、大学内の事務作業や会議、研究費獲得のための申請書作成、各種評価のための書類作りなどで忙しく、十分な時間を割けていないのが実情だ▼コロナ禍によって、働き方が大きく変わりつつあり、多くの研究者がオンライン授業の準備など増加した仕事への対応で苦労し、産みの苦しみを味わっているが、デジタルトランスフォーメーション(DX)は一つのチャンスでもある。業務効率を上げるだけでなく、業務や書類の一部を本当に必要なのか、見直すきっかけになるからだ。もちろん政府やFAも形式論ではなく本質論で研究者に求めるものを精査しなければならない。現状の閉塞感を打破するため、コロナ禍をこそチャンスにしなければならない。

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