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コラム・素領域

2022年2月25日号

素領域

ムーンショット目標を見直すことも含めて考えなければならない。CSTI有識者議員会合で量子技術イノベーション戦略の見直しについて、議論する中で出てきた▼ムーンショット型研究開発制度は、困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される社会課題等を対象に、野心的な目標(ムーンショット目標)を国が策定し、プログラムディレクター(PD)が複数のプロジェクトマネージャーを選定して、目標達成のための研究開発を進める。PDは研究全体を俯瞰したポートフォリオを構築し見直すことができるが、そもそもの目標自体を変更することはできない▼2年前、量子で実用段階まで来ていたのはアニーリングマシンくらいで、エラー率の高い量子コンピューターでは使えないと考えられていた。当然、同時に策定されたムーンショット目標5は「2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピューターを実現」となった▼この2年間でエラーの多いNISQをいかに使うか、また使えるアプリケーションを開発するかに世界の研究開発は重点化され、実用化も進んでいる。戦略見直しワーキンググループ座長の伊藤公平慶應義塾塾長は「誤り耐性のある量子コンピューターを作るのか、それともNISQなどで計算能力を上げていくのか。戦略の目標設定が重要。日本で完全な量子コンピューターができたときに、NISQが世界で使われていたら、産業や安全保障で後れを取ってしまう」と指摘する▼大きな船であるほど進路変更には大きなエネルギーが必要になる。もちろん2つの目標を目指すのも解決策の一つだが、仮に資金投入が可能だとしてもトップ研究者の数が足りない。政府の大きな目標は変わるのか注目される。

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