2023.09.15 連載
学術系AI・テクノロジーカオスマップ
研究支援系のAI・テクノロジーツールが急速に進化しており、翻訳や文書作成を超えて、多岐にわたる研究活動にAIの波が及ぶようになりました。この全体像を把握する目的で、私たちカクタス・コミュニケーションズは8月に「学術系AI・テクノロジーカオスマップ」を公開しました。このマップでは、文献検索から研究情報発信・アウトリーチまで12カテゴリーを網羅し、研究活動の各領域で利用可能な最新のツールを紹介しています。
現代は「AI戦国時代」ではなく「AI多様化時代」
「AI戦国時代」とも称される現代ですが、「AI多様化時代」のほうが実際の感覚と近いと思います。AIは単なるルーティンワークの自動化ではなく、学習に基づいた問題解決を提供するものです。そのため、データ、学習方法、インターフェース、アウトプット方法の設計・開発には、開発者の問題意識と考え方が強く反映されるものです。だからこそ、一見同じ用途のツールに見えて、解決できる問題自体が異なる複数のツールが併存しています。
似たAIツールでも解決できる問題は異なる
論文検索ツールを例にとりましょう。カクタスはAI文献検索アプリ「R Discovery」を提供しています。研究者一人一人の興味・関心・好みの学習に基づいて最新の論文が自動で推薦され、抄録を日本語に翻訳して読んだり、音声に変換して聞いたりすることができます。「忙しい人が自分にとって重要な最新論文を素早く発見し、もっと時短でたくさん読めるようにしたい」という考えから、モバイルで使えて、レコメンド機能、翻訳、音声変換を搭載した、拡散型の論文検索ツールとして開発しました。一方で、文献検索ツールの中には「Consensus(コンセンサス)」のような、「研究課題について、先行研究ですでに言われていることをまとめて知りたい」という目的に合わせた収束型のツールもあります。似たツールにも異なる特色や使い方があるので、自分の目的に合ったものを選択することが重要です。
自分に合ったAIを選ぶポイント
新しいプロダクトが次々に登場する今、自分に合ったツールと使い方を見つけるのは至難の業です。AIの波については行きたいが、使いこなすのに無駄な時間を費やしてしまう、といった悩みもあるでしょう。AIツールを選ぶ際のポイントは、まず「万能なAIは存在しない」と心得ることです。どんなに高機能なツールも、解決できる問題は限られています。また、多くのAIはまだ発展途上であり、完璧なものは存在しないと認識しておくことも大切です。すでにうまくできているマニュアル作業をわざわざAIに変更する必要はありません。
また、研究論文などの機密情報を扱う場合は、利用するAIの性質を理解し、どの情報までをどのAIに預けられるか、情報の安全性にも注意を払うことが大切です。その上で、新しいツールは楽しみながら試してみることをお忘れなく。
(連載終わり)
■研究支援AI・テクノロジーカオスマップ
https://bit.ly/3KPwJVX?r=qr
■学術論文検索アプリ「R Discovery」
https://app.adjust.net.in/9ve3mhc
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