2024.05.10 研究・成果
元川竜平研究主幹
石油の精製、薬品製造、食品加工、有用金属のリサイクルなど、溶液から目的の成分だけを取り出す手法として、溶媒抽出法が古くから利用されている。これは水と油のように混ざり合わない2つの液体間で物質がどちらに溶けやすいかを利用するシンプルな分離方法だ。
例えば、油と水の混合液に油だけに溶ける抽出剤を入れると、対象となる金属イオンが化学結合によって金属イオン錯体になり、油だけに残る。つまり、抽出剤と抽出対象の関係性が重要だという考え方で溶媒抽出法が使われてきたが、実際には、複数の金属イオンと複数の抽出剤分子が結合することでナノスケールの超分子集合体を形成しており、それが油相の成分によってもコントロールされていることがわかった。
日本原子力研究開発機構物質科学研究センターのミショ・シリル研究員、上田祐生研究員、元川竜平研究主幹、総合科学研究機構の阿久津和宏副主任技師、高エネルギー加速器研究機構の山田悟史准教授、山田雅子助教らが、フランス原子力・代替エネルギー庁、フランス国立科学研究センターとの国際共同研究で明らかにした。Journal of Molecular Liquidsに掲載された。元川研究主幹は「これまでとは全く異なるシステムが明らかになったことで、例えば、医薬品の製造など、様々な分野でより効率的に分離・抽出ができるようになります」と話す。
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