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2018.11.30 大学改革 連載

【寄稿】韓国の大学から学ぶ大学改革のヒント②           カクタス・コミュニケーションズ代表取締役  湯浅誠

近年アジア圏内で、グローバルプレゼンスを飛躍的にアップしている大学は一体どんな戦略を持ち、改革を行っているのか?この疑問に答えるため、お隣韓国でTimes Higher Education世界大学ランキングの順位を大幅に上げた大学を2つ取材してきました。今回はその1つ、成均館大学校(ソンギュングァン大学校、以下、成大)の話です。

成大はソウル市内に本部を置く、600年以上の歴史を持つ東アジア最古の大学です。世界ランキングは2015年の148位から今年の82位と、過去4年で66位も順位を上げています。今回取材に応じてくださったのはプランニング部門のヴァイスプレジデント、ソン・スンジン教授。取材で分かったポイントは、①アグレッシブなグローバル人材採用と研究環境整備、②大学内での産学連携カルチャーの醸成、そして改革を支える資金源としての③大企業資本の受け入れと共生、の3つでした。詳しくご説明します。

アグレッシブなグローバル人材採用と研究環境整備

成大は元々文系に強い教育大学でしたが、1998年からの「教育大学から研究大学へ」、2011年からの「研究大学から真のグローバルリーディング大学へ」と2度の大きな改革をしました。その柱の一つが人材採用と研究環境整備です。国際的な研究大学へと生まれ変わらせるため、企業との産学連携に意欲的でかつ国際共同研究ができる人材の獲得に力を入れ、この10年で200名近くの研究者を採用しました。まだ研究大学として歴史が浅い成大が優秀な研究者をアトラクトする手段として、旬な分野の研究所を新設し、世界トップ大学に引けを取らない研究環境整備に力を入れています。意外なことに、著名な外国人研究者ではなく韓国人研究者を採用したことが成功の要因であったとソン氏は強調しています。「既に国際共同研究を盛んに行っている優秀な韓国人研究者を積極的に雇い入れるようにしたことで、彼らが国内・海外問わず自分の研究をサポートしてくれる研究者を自然と招待してくれるようになったのです」。

大学内での産学連携カルチャーの醸成

成大はTHEランキングにおいて産業収入で高スコアを出しています。現在世界的に有名なSIEMENS、BASFそして日本のカネカが成大キャンパス内にリサーチセンターを設けているだけでなく、「ビジネスインキュベーションセンター」を設置し、常時50のテクノロジー系ベンチャー企業が入居して大学研究者と共同研究を行っています。では具体的にどう産学連携を推進しているのか?この疑問に「考えられる全ての施策をうちましたよ」とソン氏は言います。第一に大学のヴィジョンに共感し共同研究に積極的な研究者を増やすことから始め、企業と提携した際の資金面、評価面からのインセンティブを与え、研究者間で共同研究を促す仕組みを構築するだけでなく、大学訪問に来た有力な企業とプランニング部門が直接交渉にあたり、大規模な共同研究を次々に企画・締結しています。

大企業資本の受け入れと共生

成大が国際的な研究大学としての舵きりを決意した背景は、大企業のサムスンの存在なしには語れません。韓国の私立大学は国費による支援が少なく、ほとんどの経営資金を学費で賄っています。大学が生き残りをかけて経営改革を迫られる中、成大では1996年にサムスンが大学経営に参画しました。「我々が研究大学になるためには必要な提携でした。韓国の財閥企業は社会還元を非常に意識しており、大学への資金援助は珍しくありません」とソン氏は言います。実際、成大以外にも嶺南大学校 (ヨンナム大学校)ではLGが、蔚山大学校(ウルサン大学校)や中央大学校(チュンアン大学校)など複数大学を現代自動車(ヒュンダイ)が同様に資金援助をしています。

ここまで読まれた方は「サムスンの潤沢な資金があればこその改革成功ではないか」と思われたと思います。しかし民間企業が大学経営に参加することのメリットは必ずしも資金だけではないようです。「サムスンが大学に対してこうしろ、ああしろということはまずありません。むしろ逆に我々大学側がサムスンの経営方針を学んで新しい大学に生まれ変わりたいと努力しているのです。」とソン氏は言います。「大学の文化を変えるには、20年あれば充分なんです。サムスンが大学経営に入って20年、我々はもうかつての成大ではありません。大学は、本気で変わらなければならない。何もしなければ、古い体制が新しく入る人たちを古いままに育ててしまい、いつまでも変えられません。でも、もし常に何かを変えようと動き続ければ、新しく入る人たちが新しい文化を育ててくれるのです。」この言葉から感じたのは、変わろうとする韓国の大学の姿勢でした。

日本では昨今「大学改革」が叫ばれていますが、一様に改革、改革と進めるのではなく、本気で大学があるべき姿を執行部が議論し、それを現場の教員と共有し、共に進めていくことが大事だと思います。するとそのヴィジョンに共有する企業などもサポートしてくると思います。

<次回は延世大学校(ヨンセイ大学校)の事例を紹介します>(了)

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