大学ランキングや論文指標などのデータから、研究力の低下が指摘されてきたが、日本の研究力を強化し、日本を元気にしていくためには、どうすれば良いのか。新春インタビューでは、総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)議員として科学技術政策に取り組み、昨年4月から科学技術振興機構(JST)理事長、9月には内閣官房科学技術顧問に就任した橋本和仁氏にお話を伺った。
「科学に国境はない。しかし科学者には祖国がある」とはパスツールが残した名言だ。とりわけ前者は真実ではあることに疑いはないものの、90年代以前においては、東西冷戦の中でサイエンスにも壁はあったように思うし、冷戦が終結して以降のここ約30年間程度は安定した時代が続いていたからこそ言えるものだったように感じている。しかし、そのような時代は終焉を迎えたようだ。米中対立やロシアのウクライナ侵攻を契機として、世界は再び分断が進みつつある。この潮流は、サイエンスの世界にとっても無関係だとはいえないだろう。いやそれどころか、サイエンスはこれまで以上に国力に直結するものとなっている。
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