2023.09.08 連載
59%の研究者がChatGPTを利用 アカデミアで高い関心
ChatGPTの国内での普及は著しく、日本人ユーザー数は、アメリカ、インドに続き第3位を誇っています。カクタスが研究者969名を対象に行った調査によれば、研究者の59%がChatGPTの利用経験があり、アカデミア内での関心の高さが伺えます。
「ChatGPTで論文が書けた」といった報道もしばしばありますが、こうした情報とは裏腹に、私たちが足を使って研究者の方々にお話を伺うと、「ChatGPTはちょっとした文章生成には使うが、論文を書くなど研究の重要な局面では役に立たない」という意見を聞くことのほうが多い印象です。この理由には、現在の生成AI技術の限界と、研究そのものの性質の、両方が関係していると私たちは考えています。
ChatGPTは万能選手?よくある活用の例
ChatGPTはいわばAIの万能選手で、プロンプト(指示)次第で様々なタスクに対応できる点が魅力です。研究場面では、例えば以下のような種類のタスクが可能です。
【調べる・読む】情報の検索、既存概念の確認、論文を効率的な読解
【書く】抄録の作成、原稿の翻訳・校正、研究のサマリー作成
【分析する・まとめる】アイディア出し、アウトライン作成、分析のコード作成
中でも、私たちが一番研究者の方からよく聞く利用場面は「英語論文を日本語で要約して素早く読む」です。
プロンプト作成の難しさ
しかし、そのプロンプト作成がChatGPTの一番の難しさでもあります。AIへの指示の出し方にはコツがあり、指示を間違えると的外れな回答が返ってくることもよくあります。研究者間で成功したプロンプトを共有しあうなど、効果的な利用方法が研究者コミュニティ内でも模索されています。
ChatGPTの研究利用に限界がある理由
それでも冒頭のように研究者の多くが、現時点でChatGPTの研究利用に限界を感じているのはなぜなのでしょうか? 機密データの取り扱いや回答の不正確性といった技術的な問題以前に、それは研究というものの、クリエイティビティの高さに起因していると私は考えています。研究は人類にとって未知の物事、新規性の高いアイディアや概念を扱う活動である一方で、AIは既知の事実や既存のデータをもとに回答するものです。だから、まだこの世に存在していない新しい知識を生み出す仕事に対して、価値のある回答を提供することには限界があるのです。
研究者と生成AIのベストなバランス
現時点の生成AI技術を研究で活用するポイントは、単純な知的作業や煩雑なタスクに利用場面を限ることです。クリエイティブな思考や価値判断を研究者自身が行い、人間が思考した内容をもとに、AIに最適な回答をアウトプットさせ、その結果をまた人が評価・修正してまとめるのが、現時点での理想的な利用方法と言えます。
とはいえ、生成AIは日々刻々と進化しています。私たちが開発するAI論文執筆ツール「Paperpal(ペーパーパル)」にも、こうした研究支援の現場で得た知見を活用し、生成AI技術を安全かつ有益な方法で導入していく予定です。
■AI英文校正ツール「Paperpal(ペーパーパル)」
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