2021.08.20 研究・成果
ATP(アデノシン三リン酸)は、生命活動を支えるエネルギーの貯蔵や利用に関わる分子だ。最近の研究では、ATPがタンパク質のアミロイド線維化を抑制するという報告が行われているが、ATPがどのようにタンパク質を安定化するのかは不明だった。京都大学大学院工学研究科の西澤茉由博士課程学生(研究当時)、森本大智助教、白川昌宏教授、菅瀬謙治准教授、エリク・ワリンダ医学研究科助教、ライプニッツ・ポリマー研究所のベンジャミン・コーン研究員、ウルリヒ・シェラー部門長の研究グループは、NMR(核磁気共鳴)を用いて、細胞内と同程度の濃度のATPが、タンパク質と弱く非特異的に相互作用することと、ATP同士が自己会合することを原子レベルで検出することに、世界で初めて成功した。菅瀬准教授は「ATPが自己会合することで、タンパク質の疎水的な部分に結合し、結果としてタンパク質が安定化するのだと考えられます。生体内のATPは加齢とともに減少します。ATPの減少を抑制する薬剤やサプリメントによって、アミロイド線維化を抑制し、神経変性疾患を予防できるのではないかと考えています」と話す。
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