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2023.05.19 その他

「日本の最先端研究を支援」アマゾンウェブサービスの試み     クラウドサービス提供 岡谷重雄氏に聞く

アマゾンウェブサービスジャパン合同会社パブリックセクター教育事業本部の岡谷重雄本部長

 

アマゾンウェブサービス(AWS)は、2006年に他社に先駆けてサービスを開始して以来、世界で最も包括的かつ幅広く採用されたクラウドサービスとなっている。いまでは世界190カ国以上で数百万、日本では数十万の顧客にクラウドサービスを提供している。「地上で最もお客様を大切にする企業」というミッションを掲げている。アマゾンウェブサービスジャパン合同会社パブリックセクター教育事業本部の岡谷重雄本部長に話を聞いた。

 

【自前のハード不要 必要な時だけ利用/計算資源の民主化でオープンサイエンス推進】

世界に展開するAWSのグローバルクラウドインフラストラクチャーは、31のリージョン、99のアベイラビリティゾーン(AZ)、日本では東京と大阪の2つのリージョンを展開し、それぞれ4つと3つのAZを設け、各AZはたくさんのデータセンターで構成されている。このAWSのクラウド基盤は、世界の政府機関などで利用されているほど高いセキュリティを備え、信頼性が高い。

こうしたAWSのプラットフォームを活用して立ち上がった企業には、エアビーアンドビー社(Airbnb)やネットフリックス社(Netfrix)といった有名な企業などがある。日本国内では三菱UFJフィナンシャル・グループ、またデジタル庁のガバメントクラウド、教育事業分野では文部科学省CBTシステム(MEXCBT:メクビット)をはじめ、幼稚園から大学、高専や研究開発法人など、多くの顧客を抱えている。

クラウドといってもデータ保存だけでなく、AWSでは現在、クラウド上でAIやIoT、データアナリティクスなど200以上のサービスを提供している。そのサービスのうちの約9割は顧客の声に応えて開発した。さらに、2006年のサービス開始以降、129回にも及ぶ値下げを実現してきた。

このようなAWSのサービスの特徴、そして顧客を大切にしたビジネス戦略が好循環を生み、さらに需要が伸びていると、AWSが世界のユーザーに選ばれる理由を岡谷氏は説明する。

そして、いまAWSが注力するのが研究分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援である。先端分野の研究では大量のデータを分析、解析する際に、膨大な量のデータを機械学習する。これを研究者が自前のコンピューターやサーバー上で行うのは容量不足で困難なケースが多い。そこで、AWSでは「計算資源の民主化」と呼び、大規模計算に必要なコンピューティングリソースをクラウド上で提供するサービスを行っている。

研究者が必要なリソースを自前で持たなくても、いつでも必要な時だけ利用できる。しかも、機械学習の分野ではプログラミング言語などの知識がなくても、ノーコードやローコードに近い形でデータを使ってすぐに分析を行うことができるサービスもある。HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)用の高額なハードウェアを自前で購入・管理することなく、またその維持やメンテナンスの費用なども不要。従量課金制のため使った分だけ費用を払えば済むので、コストや手間を長期的に削減しつつ、本業である研究に集中することができる。

さらにAWSのクラウドは、サイバー攻撃や地震などの災害、停電などに対するレジリエンスを兼ね備えるよう設計されている。半導体技術などは進化が急速なため利用するハードウェアはすぐに陳腐化するが、クラウドなら最先端の技術を利用できる。このように、研究を促進するためにはクラウド利用が有利であると岡谷氏は力説する。

そして、研究分野では衛星データを地上で受け取る従量課金制のサービスであるAWS Ground Station、複数の種類の量子コンピューティングのデバイスが利用できるAmazon Braketなどのサービスも展開している。現在、理研と富士通が開発したスーパーコンピューター「富岳」で開発・利用されているアプリケーションを、富岳や富岳と同じ機種のスパコンだけでなく、誰でもアクセスできるAWSのクラウド上で利用できるようにする取り組みを進めている。

「すでに世界では多くの研究者がAWSのクラウドサービスを先端研究に利用して、オープンサイエンス、オープンデータを推進しています。日本でも多くの研究者の方にAWSクラウドサービスをお使いいただき、世界の研究者に負けない最先端の研究活動をしていただけるよう支援していきたいと考えております」。岡谷氏はそう期待を込めて語った。【了】

(数字などの本文内容は今年4月時点のものです)

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