科学新聞の1面に掲載している『素領域』全文と、Web限定コラムをお読みいただけます。
人間と犬との付き合いは長い。ロシアの遺跡から約1万7千年前の犬の骨が見つかっているのだ▼しかもその骨は、他の狩猟対象となっている動物の骨とは違い、きちんと埋葬されていた。当時の人間は、狩りのパートナーとして犬と一緒に暮らしていたことが推測される。このように人間と深い関係を保ってきている犬ではあるが、最近、その親密度を証明する研究データが発表されている▼スウェーデンのチームの研究成果で、一人暮らしで…
大学附属病院等による医師主導治験が増加傾向をみせている。もちろん製薬企業が実施する治験と比較すれば件数は少ないが、少しずつ増加している▼医師主導治験は03年の薬事法改正により始まり、それまで製薬企業等のみが許可されていた治験を医師も行うことができるようになった。製薬企業等が採算等の理由で実施しなかった、あるいは海外では承認されているが日本国内では未承認薬の適応外使用を対象としている。例えば小児疾患…
大学改革を加速していきたい。林芳正文部科学大臣ではなく、内閣府の松山政司科学技術政策担当大臣の発言だ▼現在の大学改革は、臨時教育審議会の第2次・第3次答申(86~87年)から始まった。これを受け、当時の文部省は、産学連携や異分野融合を進めるため奈良先端大や北陸先端大を、大学共同利用機関での学位取得を可能にするため総合研究大学院大をそれぞれ設置。また、国立大学に民間の寄附講座や寄附研究部門を作ること…
弊紙の過去の新聞を見ていたら、平成22年5月14日号に「戦略なき予算削減に危惧」の見出しで、日本化学会をはじめとした国内の科学・技術関連の26学会がまとめた提言の記事が載っていた▼当時は連立の民主党政権が予算編成で事業仕分けを導入した時代で、提言では純減された科学技術関係予算を危惧し、日本の中長期的国家戦略として科学力・技術力強化などのため、研究教育予算・投資の改善を求めている▼しかし、その後の科…
もうかれこれ30年以上前になろうか、当時の文部省宇宙科学研究所に大林辰蔵(故人)という名物教授がおられた▼大林教授は日本の宇宙開発の先駆け的な存在で、スペースシャトルを利用し、東京の空にオーロラをつくろうという実験を計画し、実行した。成否はともかく、宇宙に対するロマンを大いにかき立てられたものだ。そして今度は2019年の夏、夜空に「人工の流れ星」を輝かせようとする世界で初めての実験を民間企業が進め…
厳戒態勢の中、トランプ米国大統領が来日したが、日米首脳の会談の内容よりも、その動向や安倍首相との蜜月ぶりに注目が集まっていたようだ。首脳ワーキングランチや会談では、来年3月に日本で開催する第2回国際宇宙探査フォーラム(ISEF2)に触れ、宇宙探査分野における協力を推進することが確認された。米国では、トランプ政権になってから宇宙探査に積極的に取り組み始めた印象がある▼米国政府は10月にナショナル・ス…
オーストリアと聞くとどういうイメージを持つだろうか。ウィーンであればオペラやハプスブルク家の宮殿、アルプスにいけばスキーをはじめとするウィンタースポーツ。観光産業の印象が強いが、実は日本以上に科学技術立国なのだ▼日本政府はこの十数年、政府研究開発投資をGDP比1%にすることを目指して、研究開発投資を増やすと標榜してきた。しかし、日本全体の研究開発投資は3・56%と大きいが、政府研究開発投資は地方分…
IBMリサーチのバイス・プレジデントであるボブ・スーター氏が、商用に利用可能な汎用量子コンピューター「IBM Q」について、報道関係者などを集めて概説した▼同氏は「量子コンピューターは量子力学に基づき、量子ビット(Qビット)で計算するコンピューターである。そのため、情報をビット列で処理するクラシカル・コンピューターが解決できない問題を解くのに適している」と紹介した▼クラシカル・コンピューターは1か…
この世に生を受けたからには、自分の祖先、つまりルーツについて関心を持つ人も多いことだろう▼筆者の場合も祖父母や両親に聞いてみたことはあるが、なかなか判然とした結果には至らなかった。ところでアメリカでは、自分の口の中をこすった綿棒を送り、DNAをチェックするだけで簡単に祖先がどこからやって来たのかが分かるテストの人気が急上昇中である▼アメリカは日本とは違って建国して数百年と歴史が浅いし、ヨーロッパや…
厚生労働省による平成25年の国民生活基礎調査では、65歳以上の要介護者等の介護が必要になった原因は脳血管疾患(脳卒中)が17・2%と最も多くを占め、年々増加している。さらに支援者の高齢化によるいわゆる老々介護も問題になり、健康寿命をいかに長期化させるかが大きな課題となっている▼それに対し、近年ロボット技術を応用したヒトの歩行機能を補助する装置の開発が華々しい成果をあげている。サイバーダインの「HA…
今年のノーベル物理学賞が重力波の観測に貢献した、米国の3人の研究者に贈られることが決まった。アインシュタインの相対性理論では、大きな質量の星など強力な重力場がある時、重力による空間の歪みによって光はゆっくりと進む。この空間の歪みが波のように伝わるのが重力波だ▼重力波は空間の歪みそのものであるため、電磁波や光などと異なり、様々な環境の影響を受けない。そのため、宇宙の真の姿を映す新たな観測手段として期…
この素領域で以前、スマートフォンが普及し過ぎてしまい、街中などで歩きスマホの迷惑ぶりが目立ち、何とかならないかという話を書いた▼そうしたら今度は、米国の南カリフォルニア大学が、スマホが親子関係の悪化を招いているという調査結果を公表した。日本のティーンエージャーと親を対象に、スマホの使用習慣と、それに関する態度を調査したものである(本紙前号で紹介)▼それによると、子も親もスマホなどに四六時中没頭して…
65歳を過ぎると急速に記憶力が衰えてきて、最近、物忘れの多さを実感するようになった。親の顔を忘れるなどという落語に出てくるようなことはさすがにないのだが、人の顔と名前が一致せず思い出せないことが多々ある▼ところで国勢調査をもとにした推計によると、65歳以上の高齢者人口は3500万人を超えた。前年度比57万人増で、総人口に占める割合は27・7%だという。いよいよ医療や介護など社会保障制度の見直しを迫…
先日、伊豆大島を一周する道路を自転車で走る機会があった。島の生い立ちをありのままにいかした強烈なアップダウンがある全長約45㌔㍍のコースで、昨年はアジア自転車競技選手権が開催された。伊豆大島は2010年にジオパークに認定されている。走っていると、あちこちで火山島であることに気づく。宿の庭には巨大な火山弾が置かれていたり、噴石防御のためのかまぼこ状のシェルター(避難壕)を見かけた。また、一周道から眺…
JASIS2017では、各社が最先端の分析機器、科学機器を工夫をこらして展示していた。その中で印象に残ったのがS社の細胞培養ラボだ▼シャーレで細胞培養をする際、異物の混入はよくあることだが、多くの研究室ではそれを肉眼で確認し、一つひとつピペットで吸い取るといった作業を行っている。個人の技量に依存する作業で時間もかかるものだが、異物の認識から除去まで自動で行える装置が参考出品されていた。他にもiPS…
全国で様々な演習行事が行われた9月1日「防災の日」の由来は、大正時代に起きた関東大震災である。近年も東日本大震災や熊本地震など、多大な被害を与えた大地震が発生しており、地震大国の脅威を、いまも多くの国民が思い知らされている▼しかし、こうも大地震の多い国なのに、その備えは本当に十分なのか。国や多くの自治体が、今回の「防災の日」にも地震を想定した防災演習を実施した。日頃からも、地震に備えた準備や訓練を…
20世紀の終わり頃から生命科学が進展、特に分子科学がかなり成熟してきた。その原動力となったのがコンピューター技術である▼実際、生命現象を分子レベルあるいは原子レベルで理解し、それをコンピューターでシミュレーションすることが現実味を帯びてきている。分子がわかれば、アミノ酸配列がわかり、アミノ酸配列がわかれば、その分子の三次元構造がつかめるという具合である。ヒトゲノムの全配列から人のタンパク質すべてを…
国連合同エイズ計画(UNAIDS)の報告によれば2016年の世界のHIV(ヒト免疫不全ウイルス)陽性者数は約3670万人、そのうち53%が抗HIV治療を受けている。日本では厚生労働省エイズ動向委員会が2015年の日本における新規HIV感染を1006件、新規AIDS患者を423件と報告し、15年末までの累計は約2・5万人(血液凝固因子製剤による感染者を除く)となった▼HIVはヒトの免疫細胞に感染し、…
米国の大学と同じように、ベンチャー企業のIPOで国立大学が独自財源を構築することができるようになるかもしれない▼文部科学省は1日、国立大学や大学共同利用機関が、大学発ベンチャーを支援する業務などの対価として、現金ではなく株式や新株予約権を受け取れることや、それらの株式や新株予約権を適切なタイミングで売却できるとする通知を出した▼これまで国立大学が株式を取得するのは、寄付あるいはライセンスの対価、ま…
どうしてこうも利用者が急速に増えたのか、とにかくすさまじい勢いでスマートフォンが世の中に普及してしまった▼CIAJ(情報通信ネットワーク産業協会)という、ICT産業を代表する業界団体が毎年モバイル通信端末の利用実態調査を行っている▼7月末に2017年度版の調査結果が発表されたが、1台目のモバイル端末としてスマホを利用している人は、調査対象者の90・7%にも及んでいるという結果だ▼従来の携帯電話端末…
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