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科学新聞の1面に掲載している『素領域』全文と、Web限定コラムをお読みいただけます。
日本には、マネジメント人材のプロフェッショナルが少ない。こうした問題意識から始まった研究開発マネージャーの公募は、1機関(JST)の小さな一歩でしかないが、長期的に見れば、アカデミアにおける大きな一歩になるかもしれない▼研究者としての能力とマネジメント能力は異なるにも関わらず、日本の大学では研究者が学長などを務めている。もちろん、両方の能力を兼ね備えている人物もいるため、必ずしも大学経営ができない…
世界的な半導体不足をきっかけに、台湾の大手半導体メーカーと日本企業による新工場建設や、次世代半導体製造の新会社設立など、日本の半導体産業再興の動きが進んでいる▼国の方でも、文科省の今年度予算で大学や国立研究開発法人を中心に次世代半導体創成拠点を形成する施策が進められたり、経産省の第2次補正予算案で半導体産業の支援に1兆円以上の投資が盛り込まれたりするなど、動きが早まっている▼日本は「産業のコメ」と…
地球近傍天体に関して興味深い実験が9月末、NASAを中心に行われた▼小惑星に探査機を衝突させて軌道を変えようというものである。地球近傍天体とは、地球に接近する軌道を持つ天体(彗星、小惑星、大きい流星体)の総称である。その中で、特にJAXA小惑星探査機「はやぶさ1」や「同2」により探査が行われた小惑星「イトカワ」や「リュウグウ」などは、宇宙の起源や地球の成り立ちなどを知るための貴重な科学的知見をもた…
近年、光を利用したがん治療である「光免疫療法」が、「手術」「薬物療法」「放射線療法」「免疫療法」に次ぐ第5のがん治療法として注目されている。2011年に米国国立衛生研究所・国立がん研究所の小林久隆氏らにより初めて報告された▼「光免疫療法(NIR-PIT)」は、がん細胞に発現する抗原に、特定の波長の近赤外光で活性化する化合物を結合した薬剤を投与。同波長の近赤外光を照射することで薬剤が結合したがん細胞…
東北大の出澤真理教授が発見したMuse細胞は不思議な細胞だ。点滴で全身投与すると疾患部位に到達し、素早く対象の臓器に分化し修復してしまう。研究グループは今回、なぜ、素早く正確に損傷した細胞に分化できるのかという一番重要な疑問に、貪食による因子のリサイクルであると結論づける研究結果を発表した▼Muse細胞を使った治験は、急性心筋梗塞、脳梗塞、表皮水疱症、脊髄損傷など7疾患で行われている。昨年5月には…
最近、メタバースという言葉を多く聞いたり目にしたりするようになった。調べてみると、インターネット上に構築された3次元の仮想空間の世界のことである▼その仮想世界の中で、自分の分身であるアバターを操作し、現実の世界と同じように活動させることができる。他人のアバターと交流する。ゲームや買い物、観光などができ、土地を買って家を建てることもできる▼機器としてはゴーグルのようなヘッドマウントディスプレイを使用…
「人生100年時代」という言葉をよく聞くようになった。これを実現している100歳以上の長寿者を「センテナリアン」と呼ぶ。日本では2022年現在、なんと9万人を超えたという。しかも、そのうちの2割に当たる人が自立した生活を送っているそうで、そのことに驚きを覚える▼長寿者には、何か生活の傾向があるのだろうか。日本の大学での研究で、その一端が明らかになってきた。このような人たちの特徴として、認知機能が高…
今年は残念ながら日本人のノーベル賞受賞はならなかったが、9月に第32回イグ・ノーベル賞の発表があった。同賞はImprobable Research社が主宰し、「人を思わず笑わせ、そして考えさせてくれる」なんらかの研究を行った個人やグループを対象に毎年選考される。受賞者には賞状とトロフィー(PDF:自分で工作)、10兆ジンバブエドルが贈られている。もはや恒例となった感があるが、今年も日本人が受賞。こ…
岸田文雄首相は2日に京都で開かれたSTSフォーラムで「イノベーションの源泉となる人への投資を含む基礎研究力を強化するとともに、価値観を共有する同志国と連携し、国際頭脳循環を促進します」と話した。研究力の低下が指摘されている中、こうした姿勢を日本のトップが示したことは大きな意義がある▼STSフォーラム(科学技術と人類の未来に関する国際フォーラム)は、故・尾身幸次・元科学技術政策担当大臣によって200…
2006年に科学技術・学術政策研究所が「忘れられた科学-数学」を公表してから、数学関連の研究プログラムが立ち上がり、WPIでも数学と他分野の融合拠点ができた。数学協働プログラム、数学アドバンストイノベーションプラットフォームなどで拠点形成も進んだ▼しかし、05~07年と16~18年の数学と数学関連分野の論文数を見ると、世界トップレベルを維持しているものの、各国の伸びが著しく、6位から9位にまで相対…
インターネットの普及・発展に伴い急速にデジタル化が進む一方で、紙媒体の衰退が激しい。長く親しまれてきた新聞でさえ、今や1世帯当たりの購読部数が0・57部(2021年:日本新聞協会調査データ)という状況だ▼同調査データによれば07年にはまだ1・1部あったが、翌08年には0・98部と1部を切り、以降も減少を続けている。新聞に携わる者として、明るい未来はないのかと寂しい気持ちになってしまう▼しかし、そう…
誠に残念というより、何か大きな虚しさを感じざるを得ない。米ニューヨークの国連本部で約1カ月にわたって行われていた核不拡散条約(NPT)の再検討会議のことである。一カ国の反対で決裂し、最終文書を採択できなかった。その一カ国とは言わずと知れたロシアのことだ▼ロシアといえば、半年前に、弟分的な国と思っていたウクライナが西側(自由主義国)のNATOに入ろうとしたことから、「気にくわない」と一方的に攻め込ん…
第8回アフリカ開発会議(TICAD8:8th Tokyo International Conference on African Development)が8月27~28日にチュニジアで開催された。同会議は日本政府が主導し、1993年から国連、国際開発計画、世界銀行、アフリカ連合委員会との共同で「アフリカの開発」をテーマに開催されている国際会議で、アフリカでの開催は2016年にケニアで開始されて以…
理研の雇い止め問題に端を発して、全国の大学・公的機関で約3000人が今年度末には解雇されることが明らかになっている▼改正労働契約法により、任期付き雇用は5年を上限として、5年を過ぎた場合には常勤雇用の権利が労働者に与えられることになった。ただし、研究者の仕事は5年で成果を出すことは難しいため、例外として10年間という猶予が与えられた。その最初の適用が今年度末だ▼民間企業では約5年前、同じことが起こ…
今年も猛暑の夏が来て、8月15日の終戦の日を迎えた。長引くロシアのウクライナ侵略戦争、台湾を包囲した中国の実践さながらの軍事演習という緊迫した世界情勢の中、今年は何か不安を感じる中での一日だった▼その日の前後には、過去の日本の侵略戦争を反省する記事や番組が、ウクライナ侵略と重ねるように新聞やTVで報道された。どうして人は戦争でなく、話し合いで解決できないのか▼悲惨な出来事を繰り返すたびに人々はそう…
先日、目的のものを手に入れようと、ある量販店に行ったまではよかったのだが、あまりにも商品の数が多く、結局買わずじまいに終わってしまった▼読者の中で同じような経験をした人もいることだろう。『選択の科学』の著者として有名な米コロンビア大学の先生は、選択肢が増えすぎると人は動けなくなると指摘している。人間は何かを検討するとき選択肢の情報を脳にインプットすることでエネルギーを使う▼そういった場面に臨むと、…
厚生労働省は8月1日から9月30日まで、労働災害防止に向けて事業場・企業で行っている、通常視覚的に捉えられない危険性、有害性を「見える化」して効果的な安全活動につなげた事例を募集する「令和4年度『見える』安全活動コンクール」を実施している。応募した事例は「あんぜんプロジェクト」Webサイト(https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzenproject/)に掲載され、11月から…
時間があったので東京ビッグサイトで行われた医薬品・化粧品に関する専門技術展「インターフェックスジャパン」をのぞいてみたら、旭化成のブースで面白いものを見つけた。水分子しか通さない膜でできたチューブに液体を循環させ、その周りで塩水を循環させることで、液体を濃縮するという装置だ。浸透圧を使うという原理も装置の構造もシンプルだが、医薬品の製造過程で必要となる濃縮作業が、加圧・加熱せずにできるため、各社か…
暑い夏が今年は平年より相当早くやってきた。6月の気温では統計史上最高を示した地域が多かった。気象庁が7月1日に発表した「6月の天候」によれば、それでも上旬は涼しかった▼上旬の平均気温は北日本でかなり低く、東日本で低かった。西日本と沖縄・奄美では平年並みだった。しかし、その涼しさは下旬には嘘のように一変した▼各地で6月下旬としては異常な暑さとなった。太平洋高気圧に覆われて暖かい空気が流れ込みやすかっ…
仕事上で、何らかの評価を下すことの難しさはやればやるほど思い知らされる。それが人物の評価となるとなおさらである▼参考にしたいのが「ゲイン・ロス効果」である。心理学の世界で有名な用語で、もともとマイナスの印象を抱いていた後にプラスの材料が示されると、そのギャップによってプラスの印象を強く受ける、もしくはその逆の効果のことだ。アメリカの興味深い実験でそれが実証されている▼実験者(サクラ)は、自分が持つ…
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