TOP > コラム・素領域一覧
科学新聞の1面に掲載している『素領域』全文と、Web限定コラムをお読みいただけます。
イグ・ノーベル賞の授賞式が9月14日にオンラインで開催され、今年も日本人の受賞者が誕生した。Annals of Improbable Research誌の編集長であるマーク・エイブラハム氏によって1991年に創設された。「人々を笑わせ、そして考えさせる研究」に対し複数部門で賞が毎年贈られて、今年が第33回目▼今年は栄養学賞が明治大学の宮下芳明氏(総合数理学部教授)と中村裕美氏(研究当時大学院生、現…
先日、知り合いから「(長年勤めてきた)会社を辞めることにした」という電話がかかってきた。退職金の積み増し分があったこと、3日間にわたる圧迫面接で疲れたこと、やりがいがなくなったこと、というのが主な理由だ▼最近では、様々な研修を行う会社は増えてきたが、再就職のためのキャリアサポートは、退職を決めた人に、再就職先を紹介する程度だ。ただし、これは正社員に限られる。契約社員や派遣社員の場合、普段からの研修…
今年は1923年(大正12年)9月1日の関東大震災から100年ということで、テレビや新聞、雑誌など多くのメディアで様々な特集が組まれた▼大震災直後の東京の様子が撮影された何本ものフィルムによる記録映像が8K映像として高精細化・カラー化され、TV放送されたNHKのスペシャル番組を見た▼崩壊した建物や地震後の大火災で亡くなった人たちの焼死体、家財道具を大八車に満載して火事から避難しようとする大勢の人々…
9月8日は国際識字デー。1965年にユネスコによって宣言されたもので、尊厳と人権としての識字の重要性を周知し、識字率向上を目指し制定された▼ユネスコによれば世界は進歩し続けているにも関わらず、2020年時点の世界で少なくとも約7・6億人が識字能力を身につけていない。教育格差から男性より女性の識字率が低い。近年のコロナ禍や世界情勢の変化、気候変動でその問題はより深刻化し、低・中所得の国々では簡単な文…
最近、ウェルビーイング(一人ひとりの多様な幸せ)という言葉をいろいろな場面で目にするようになった。では、科学技術とウェルビーイングについては、どのような関係があるのだろうか▼文部科学省の科学技術・学術政策研究所は3月、15歳から69歳までの男女合計6600人にアンケート調査を実施した。半数以上の人が、科学技術の進歩が健康状態、経済成長の分野でウェルビーイングの増進につながっていると答えている。2分…
毎年、夏になると日本列島にやってくる台風。この夏も6号、7号が到来して沖縄、九州、四国、近畿、中国、東海、関東、東北などを襲い、大きな被害をもたらした▼鉄道や道路、航空機など交通機関に与えた影響も大きく、通勤など日常の利用だけでなく、お盆休みの帰省や観光の利用にも支障を及ぼし、各地で混乱を招いた▼今回の台風では短時間に大量の降雨があり記録的な降水量になった地域もあった。風も強くて竜巻などの突風が発…
8月11日は「山の日」で、2014年に国民の祝日に制定された。海の日と比較すると少し影が薄いが「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」趣旨はなかなか素敵だ▼とはいえ警視庁によれば昨年の山岳遭難は3015件で3506人が受難。そのうち死亡・行方不明者は327人だった。発生件数は統計の残る昭和36年から平成初期まで年間500件程度で横ばいだったが、以降一貫して増加傾向で推移している。コロナ禍で一時…
岸田政権が進めるグローバル・スタートアップ・キャンパス構想が、ようやく具体的に動き出した▼文部科学省は7月28日、グローバル・スタートアップ・キャンパスフラッグシップ拠点(仮称)整備に係る基本計画策定に関する調査・検討事業の委託先として、明豊ファシリティワークスを選定し、契約を結んだ。今後、同社において、東京・恵比寿駅近くの防衛省目黒地区の一部を再開発して整備する、拠点施設のあり方やコンセプト、研…
7月18日に開催された国連安全保障理事会のAI(人工知能)に関する公開会合で、AIの恩恵とリスクについて議論が行われ、参加各国の多くからは、期待と共に軍事や不正行為などに利用されかねない潜在的な脅威に対する懸念が示されたという▼昨年11月に公開された米国オープンAI社のChatGPTが注目されて以来、今年に入って生成AIの利用に関する問題がクローズアップされ、政府も何らかの規制が必要と考えて検討を…
総務省消防庁は「夏期における熱中症による救急搬送人員の調査」を今年も例年通り5月1日を含む週から開始した。週1回速報として発表し、10月1日まで継続が予定されている▼厚生労働省人口動態統計では熱中症による死亡者は1993年以前は年平均63人だったのに対し、94年以降は663人に増加。記録的な猛暑で死亡者が最も多かった2010年には1745人が死亡した。それ以降は減ったものの、近年になって18年から…
「2025年度新規公募分から、学術論文等の即時オープンアクセス(OA)を実現する」。CSTIが掲げた政府としての目標だが、これを実現するためには大きな課題が残されている▼OAには、出版社側にAPCを支払い出版社のプラットフォームで論文を公開するゴールドOAと、著者最終校正版をリポジトリで公開するグリーンOAがある。日本ではグリーンOAを基本としつつ、ゴールドOAや出版社との交渉力の強化なども進める…
メディアの中で情報源としての重要度が最も高いのはテレビ(82・3%)であり、次がインターネット(77・8%)。新聞(45・5%)と雑誌(12・9%)はこれらより低い▼これは、総務省がまとめた「令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(対象者:13歳から69歳までの男女1500人)によるものだ。近年は新聞などの紙メディア離れが叫ばれているが、結果はそれを裏付けているようだ▼…
ステルスマーケティング(ステマ)とは、実際は広告主による広告であるにもかかわらず、消費者にはそれが分からないような欺瞞的な宣伝行為のことを指している▼国民の消費行動のデジタル化の進展とともにインターネット上の広告、特にSNS上の広告について、ステマが一般消費者の合理的な意思決定を阻害するなどの問題が顕在化した。実際SNS上には、以前はそう思われる投稿が散見されていた。これを受けて今年10月から景品…
自然科学は、自然の理を理解するものだが、その現象を観察するためには様々なツールが必要になる。こうした観察のための「目の歴史」は、自然科学の発展の歴史とも言える▼17世紀のオランダの科学者アントーニ・ファン・レーウェンフックは、歴史上初めて顕微鏡によって微生物を観察し、「微生物学の父」とも呼ばれている。織物商だったレーウェンフックは、生地の品質を見るため虫眼鏡を使っていたが、その経験の中で単眼式顕微…
「日本はデジタル化が遅れている」というので、国を挙げたDX推進が行われている。マイナンバーカードの普及と活用はその大きな施策の一つで、各種の行政サービスに利用できるよう取り組みが進められている▼しかし、マイナ保険証や公金受取口座におけるひもづけのミスが続出するなど、ここに来てトラブルが相次いでいる。政府の焦りがミスを生んでいるようにも見える。「急がば回れ」という例えもある。時間はかかっても、まずは…
生物個体ではなくそれが生息する場所の周辺で採取された水などに含まれる環境DNA(eDNA)から、そのエリアに存在する生物の種類や分布を把握できる環境DNA解析が近年注目されている。水中や土壌中など環境中に放出された生物由来のDNAの集合体を解析することで、そこに生息する生物そのものが発見できなくとも存在をモニタリングできる▼東北大学や日本郵船などからなる研究グループは、昨年6月に環境DNAを用いた…
G7科学技術大臣会合が行われていた仙台・秋保温泉からの帰り道。バスの中で、東北大学の学生さんと話をする機会があった。その時に「G7といっても、経済規模では世界の中心ではなくなっているのに、G7サミットや科学技術大臣会合を開く意味はどこにあるのですか」と聞かれた▼かつて、サミットでの決定が世界の潮流を決めていた。しかし、途上国の急激な経済成長などにより、G7の経済規模は世界の半分以下になり、またG7…
人類の知恵を結集させたはずの科学技術は結果として地球温暖化や核兵器などの深刻で大きな脅威をもたらしている▼科学技術の発展は人類に豊かさと幸福をもたらしてきたが、一方ではそうした事態も生み出し、残念ながら、科学技術に対する信頼や期待は失われつつある▼そして今また生成AIをはじめとするAIの研究開発や利用の在り方が、にわかにクローズアップされてきている▼この問題を議論した4月末のG7群馬高崎デジタル・…
国連は昨年、世界人口が80億人に達したと発表し、2050年には97億人、80年には約104億人でピークを迎えると予測した▼2013年5月に国連食糧農業機関(FAO)は食品および飼料における昆虫類の役割に注目する報告書を公表した。FAOがオランダのヴァーヘニンゲン大学と共同で行った調査研究によれば、人は1990種類を超える昆虫を食用にしている。昆虫は食品および飼料としての可能性を秘めていると報告した…
先日、若い記者に「なぜ日本学術会議は透明性の確保に応じないのか」と聞かれて、少しあきれてしまった。直前にあった内閣府の説明で、会員選考に選考諮問委員会を導入することに学術会議が反対したのは、不透明なプロセスで会員を選びたいためじゃないかと理解してしまったようだ▼そもそも人を選ぶ際の透明性とはなんだろうか。私個人の考えとしては、後から検証可能であることだ。選挙であれば得票数、組織内人事であれば内部・…
© 2024 THE SCIENCE NEWS