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科学新聞の1面に掲載している『素領域』全文と、Web限定コラムをお読みいただけます。
「医食同源」ということばがあるように、食事は我々の健康に欠かせない大切なものである。今年も食べた人がいるだろうが、新年1月7日の朝食に食べる七草粥の習慣なども、健康を願う昔の人の知恵だろう▼農林水産省「数字で見る日本の食(2018年度食育白書から日本の現状を紹介)」によれば、第3次食育推進基本計画において、食事面で健康のためにするよいこととして、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日2回以上ほぼ…
令和4年がスタートした。多くの人が神社仏閣の前で、あるいは山や海で初日の出を仰いで、「今年1年、幸せな日々を送れますように」と祈ったことだろう▼幸せになりたい。誰しも思うことではあるが、そう願うならば、よく知られた「情けは人のためならず」ということわざを思い起こしてほしい。この言葉の本来の意味は「人に情けをかければ、その人のためになるばかりでなく、巡り巡って自分のためになる」ということである。これ…
謹んで新年をお祝い申し上げます。旧年中はひとかたならぬご厚情を賜り、誠にありがとうございました。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます▼新型コロナウイルス感染症は日本では沈静化しているものの世界的な拡大は衰えをみせない。新規感染の平均報告数が最多の米国では、これまでに81万人が同疾患で死亡し、日本では1万8千人余りが死亡した。沈静化の理由が不明なまま日本でも新たな変異株が拡大している▼Agoopに…
この原稿を書いている時点で57の国と地域で感染が確認されるなど、オミクロン株が世界的に広がっている。オミクロン株は、これまでの変異株とは異なる変異をしており、ワクチンの感染予防効果が低いなどと言われている▼どうしてこんな変異株が生まれたのか。専門家から話を聞くと、2つの要因があるようだ。一つは、アフリカにおけるワクチン接種率の低さ。国によって異なるが、1~2割という接種率の中で新型コロナウイルスが…
岸田文雄首相は10月8日の第205回国会における首相就任後初の所信表明で「新しい資本主義」の実現を政策目標の一つに掲げ、それを実現する車の両輪の一つである成長戦略における第1の柱に「科学技術立国の実現」を据えた▼実現へ向けて実のある政策を進めてほしい。その具体策の一つとして、世界最高水準の研究大学を形成するために10兆円規模の大学ファンドの年度内実現をあげており、その準備がいま進行中である▼かつて…
生物の進化の仕組みの中で重要な説として考えられているものに、自然淘汰と適者生存がある▼自然淘汰とは、自然界で生態的条件や環境などによりよく適合するものは生存を続け、そうでない劣勢のものは自然に淘汰されること。一方、適者生存は、環境に最も適応できる生物だけが生き残り、適応できない生物は滅びていくということである▼ウイルスは、他生物の細胞を利用して自己を複製させる、ごく微小な感染性の構造体である。生命…
啓蟄は虫が春を感じて冬ごもりから出てくる時期だが、その逆の虫が冬ごもりする時期は閉蟄と言い、旧暦10月上旬頃を指すという▼昆虫は変温動物であるため、気温が下がると活動できなくなる。一方で恒温動物より低温下の生存という面では寒さに強く、多くの場合凍結しなければ休眠することで冬の厳しい季節に耐えることができる▼昆虫は恒温動物より高温には弱いが、一般的に幼虫であれば10度C以上で発育し、成虫であれば10…
日本のトップ大学を世界に伍する研究大学にするため、10兆円規模の大学ファンドを今年度中に造成し、運用を開始する。岸田政権が掲げる重要政策の一つだが、現場からは不満や不安の声が聞こえてくる▼小林鷹之科学技術担当相は「特定分野に強い大学、地域の人材育成や社会課題解決に取り組む大学など、様々なタイプの大学が、社会の支え、知の基盤になっている。それぞれの大学の機能を強化するため、大学振興パッケージを年内に…
東京2020オリンピック・パラリンピックの開催前には話題となり、懸念されたサイバー攻撃だが、1年遅れでの開催となった大会期間中、サイバー攻撃は話題にならなかった▼コロナ騒ぎの中での開催だったため、関心が向かなかったのか。そう思っていたら、先月21日にNTTがオンライン説明会を開いてセキュリティ対応の成果を公表した▼結果からいえば、オリンピック・パラリンピックの大会運営や競技運営に影響を与えるような…
会議などでテーブルの一角にちょっとした飴や菓子類が置かれていることがある。これはその場に何のメリットをもたらすのか▼以前、取材で見聞したことだが、国際交渉の場で各国の代表や重鎮が自国の立場を主張した際に、議論がヒートアップするあまり、お互いが相手に対し、テーブルにあった飴を投げ合ったことがあった。「これは大変なことになった。話がまとまるのか」と思われたが、関係者は「これくらい白熱した方がまとまるも…
第49回衆議院議員総選挙と第25回最高裁判所裁判官国民審査が10月31日に行われる。期日前投票の期間は20日から30日に指定され、各自治体は各所に投票所を設けている。自治体によってはWebサイトに混雑の程度を表示しているので感染症対策の参考にしてほしい▼期日前投票は、公職選挙法の一部を改正する法律が第156回国会で成立し、平成15年(2003年)12月1日から施行。従来の不在者投票制度が改められ、…
総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)で、STEAM教育、探求力の育成、ギフテッド(先天的に突出した才能の持ち主)の子供たちのための教育について議論が進んでいる。学習指導要領には記載されているものの、日本の初等中等教育において不十分だと考えられているものだ▼発達障害の可能性のある子供は、小学校1クラス(35人学級)で2・7人、中学校1クラス(40人)に1・6人。ギフテッドの可能性のあるIQ1…
今年のノーベル物理学賞を、米プリンストン大学の眞鍋淑郎氏が受賞した。CO2の濃度上昇が地球表面温度の上昇につながることを証明し、現在の気候モデル開発の基礎を築いた功績が認められたものだ▼気候学分野からの初のノーベル賞受賞ということだが、その研究自体は1960年代に、眞鍋氏が米国へ渡って成し遂げた研究成果だという。実に半世紀以上も前のことである▼しかし、地球温暖化問題に対して世界全体が取り組み始めた…
かむ力(咬合力)について意識したことがあるだろうか。咬合力とは、物をかみ締める顎の力のことで、最近の日本人はこの力が落ちてきているという▼食事の際に人がかむ力はだいたい自重と同じ、男性であれば60㌔㌘くらいの力をかけているというのである。この咬合力がいったいどれほど重要性なのか。日本の研究機関と大学の共同研究によりその一端が明らかにされている。歯科診療を受けた一般の人(50~79歳)1547人を追…
第31回目を迎える今年のイグ・ノーベル賞の授賞式は9月20日に開催され、10件の受賞業績が発表された。今年も日本の受賞者が誕生、15年連続の受賞となった▼受賞したのは京都工芸繊維大学の村上久助教、長岡技術科学大学の西山雄大講師、東京大学のフェリシャーニ・クラウディオ特任准教授、西成活裕教授らの研究グループで、「なぜ歩行者は”時には”他の歩行者とぶつかってしまうのかを明らかにした実験を行ったこと」に…
菅義偉総理が自民党総裁選への出馬を断念したことで、今月末にも新総裁・新総理が誕生することになるが、日本学術会議の会員任命拒否問題については何の結論も出ずに次の政権に移行することになりそうだ。ただ、新総理が改めて6人を任命すれば、この問題は一応の決着をみることになるだろう▼これと並行して動いているのが、学術会議の機能強化についての議論である。自民党PTと学術会議とでは設置形態などで異なる結論が出てい…
9月1日にデジタル庁が正式に発足した。欧米などの先進国に比べ、様々な分野で日本のデジタル化が遅れていることを受けて、政府が打ち出した日本再興への具体策である▼国・自治体、準公共(健康・医療・介護、教育、防災、モビリティ、農業・水産業、インフラ)、民間のデジタル化を推進し、デジタル活用により多様な幸せが実現できる社会を目指す▼そして「誰一人残さない、人に優しいデジタル化」「デジタルを意識しないデジタ…
「プラセボ効果」という用語を聞いたことがあると思う。親しくしている医師から「手術をしないでいるガン患者が、市販のビタミンドリンクが効くと思い込み、毎日のように飲用し、元気にしている」という話を最近聞いた。そこでプラセボ効果を思い出したのである▼そもそもこの効果は、「偽薬」つまり本当の薬ではないものを本物だと思って使用した際、本来出るはずのない効果により病が回復したり痛みが和らいだりする現象のことで…
9月1日は1923年に関東大震災が発生した日であるとともに、暦の上では二百十日にあたり台風シーズンでもあることから「防災の日」とされている。同日を含む8月30日から9月5日までは「防災週間」とされ、防災知識普及のための講演会や防災訓練、防災功労者の表彰等のイベントが例年開催されてきた。しかし、現時点では新型コロナウイルス感染症の拡大はとどまるところを知らず、訓練等は多くで中止が予定されている▼そこ…
日本の研究力低下の大きな要因の一つになっているのが、修士課程から博士課程への進学率の低下だ▼修士課程学生は優秀な先輩を見ているが、その人たちが就職先もなく、結婚もできず、いわゆる高学歴ワーキングプアになっている姿を目にしているからだ。欧米とは異なり、日本企業の多くは博士の採用に消極的である▼こうした状況を改善するため、ジョブ型雇用を進める企業と博士の就職先を確保しようという大学で構成される、ジョブ…
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