TOP > コラム・素領域一覧
科学新聞の1面に掲載している『素領域』全文と、Web限定コラムをお読みいただけます。
沖縄気象台は5月4日に梅雨入りを発表した。昨年より1日早く、平年より6日早い梅雨入りとなった。5月末に日本気象協会が発表した予想によれば、関東甲信の梅雨入りは6月上旬だという▼梅雨時期は土砂災害をはじめとした災害が増加する。昨年7月には東海地方・関東地方南部を中心に停滞した梅雨前線の影響で、これら地方では記録的な大雨となり、静岡県熱海市で土石流が発生した。それだけでなく雨は交通事故も増加させる。首…
日本の法体系や商慣習そのものが、挑戦者が育ちにくい環境を形成しており、一部の法改正や規制緩和だけでは焼け石に水ではないか▼日本の法体系は六法をベースに作り上げられているが、それらを改正することは非常に少ない。その代わり、特別法などを制定し、改正することで様々な問題に対処してきた。例えるなら、大きな幹があり、そこからたくさんの枝葉が伸びており、その枝先を剪定したり接ぎ木をしているようなものだ。この数…
ロシアのウクライナ侵攻はいまだに終結が見えないまま、痛ましい紛争状態が続いている。一方で、今回の紛争ではテレビ放送やインターネットなどを用いた情報戦もすさまじい▼我々が見聞きするテレビや新聞報道では、ロシア側の一方的で残虐なウクライナ市民への攻撃などが伝えられている▼逆に、ロシア国内では情報統制が行われ、侵攻を正当化する情報や戦闘勝利の情報などが、ロシア国民に伝えられていると報道されている▼ロシア…
コロナ禍の影響で、ステイホームに慣れてしまい、外に出ることにおっくうになってしまっている人もおられるだろうと思う▼そのことが健康面で危険信号となるというデータを紹介しよう。日本人成人は1日平均7時間座っているとか。これは世界一の長さだという。米国の大学の座位行動に関する研究によれば、座ってばかりいると、心臓病で6%、糖尿病7%、大腸がん10%とそれぞれ罹患するリスクが高まるそうだ。逆に座りっぱなし…
文部科学省は今年2月に初等中等教育段階の教育政策の改革方針を示すものとして「教育進化のための改革ビジョン」を公表した。コロナ禍を契機とした生活様式の変化とICT機器の利用による価値創造的な学びの提供による誰一人取り残さず個々の可能性を最大限に引き出す教育と、教職員の本務に集中できる環境整備の2つを基本理念としている▼多くの課題は予算の補充で解決できそうではあるが、これまで初等中等教育への投資は軽視…
日本の人口の80%が新型コロナのmRNAワクチンを2回接種しており、国内外の臨床データからも、一定の感染防止効果と重症化予防効果が確認されているにも関わらず、いまだに、ワクチンは危険だから打つのはやめよう、といって駅前で主張している人々や街宣車のようなものを見る▼彼らの主張を聞いてみると「○○先生(医師)が言っていた」「とにかく怖い」といった情緒的なものが多く、論拠は非常に弱い。また「安全性が証明…
4月5日に公表されたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書第3作業部会報告書では、世界全体のCO2をはじめとした主要な温室効果ガス(GHG)の人為的排出量が、依然として増え続けていることが改めて示された▼世界各国が取り組む温暖化防止対策には目標とする1・5度Cの上昇を止めるため、さらに大きな努力が求められている。気象庁の各種データ・資料から「日本の年平均気温偏差の経年変化(189…
騒音と雑音。意味が似ているふたつの言葉だが、そのとらえ方として共通する認識は「うるさく、不愉快な音」となるだろう▼この好ましからざる音に関して科学的に興味深い研究成果が出されている。騒音についてだが、ヨーロッパの大学の研究で、騒音の大きい場所に住んでいる人は、相対的に体脂肪の量が多くなり太りやすくなるという結果が出た。騒音による刺激を受けると、ストレスによってストレスホルモンのコルチゾールが増える…
今年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵攻は世界に衝撃を与え、先行きの見えない状況が続いている。国内外への避難民は1千万人を超えたという。その中で日本ユニセフ協会や日本赤十字社、国連UNHCR協会、在日ウクライナ大使館、国際NGOだけでなく、各自治体なども寄付を呼びかけ支援の輪が広がっている▼国内の大学でも複数の大学が学生等の受け入れを表明した。日本経済大学はウクライナの避難民学生の受け入…
昨今、大学と企業との共同研究が増加しているが、多くの大学ではあまり儲かっていないようだ。これは政府の競争的資金と同じような経費の計算をしているためだという▼政府系資金では、直接経費+間接経費30%が研究費総額として計上される。つまり直接経費が1000万円であれば、総額は1300万円。一方、産学共同研究の場合、直接経費の中に関わる教員や学生の人件費を含めることができる。しかも教員の人件費は能力や実績…
21世紀に入ってもなお、人類は互いに国益などで争い武力による争いを続けている。第2次世界大戦で、多くの国のたくさんの人々が命を失ったが、その後も戦争はなくならず、地域紛争やテロが相次いで起きている▼今回のロシアによるウクライナ侵攻では、ロシア側が核攻撃をもにおわせて不気味な状況となっている。しかし、核攻撃は絶対に現実になってはいけない、人類最大の脅威である▼世界の主要国の一つであるロシアの大統領が…
発生からしばらく経過したが、1月15日に南太平洋のトンガ諸島で大規模な海底火山の噴火が起きた▼噴煙は高度3万㍍に達し、半径260㌔に広がった。その爆音たるや南太平洋全域に及び、トンガから800㌔離れているフィジーの首都スバでも、雷鳴のようにとどろいたという。テレビの映像での印象ではあるのだが、その規模の大きさは想像に余りある。噴火の影響により15㍍以上の津波がトンガを襲い、日本でも岩手県や鹿児島県…
カメラやセンサーの小型化・高感度化に伴うバイオロギングの発展は目覚ましく、これまで知られていなかった野生生物の生態が明らかになってきている。バイオロギングは野生生物に小型の行動記録計(データロガー)やGPS装置などの機器を装着し、その動物の生態や周囲の環境情報を記録する手法で、動物を捕獲して回収したり、機器のみを回収したりすることによって人間が観察することのできる範囲外の情報を取得できる▼最初は主…
ムーンショット目標を見直すことも含めて考えなければならない。CSTI有識者議員会合で量子技術イノベーション戦略の見直しについて、議論する中で出てきた▼ムーンショット型研究開発制度は、困難だが実現すれば大きなインパクトが期待される社会課題等を対象に、野心的な目標(ムーンショット目標)を国が策定し、プログラムディレクター(PD)が複数のプロジェクトマネージャーを選定して、目標達成のための研究開発を進め…
オミクロン株の登場で、またもや急速な感染拡大に陥っている新型コロナウイルス。2年以上続くこのパンデミックは、いまだに全く先が見通せない。世界が一致協力して対策に力を注がねばならない▼しかし、そうした中で北朝鮮のミサイル発射実験が続き、欧州に目を向ければロシアによる侵攻が危惧されるウクライナ問題が緊迫した局面を迎えるなど、世界情勢は雲行きが怪しくなっている▼世界がいま抱える目前の危機は、パンデミック…
ガンの早期発見のための診断はバイオプシー(生検)によって行われる。一般的に腫瘍のある組織を取ってきて病理専門医が顕微鏡で判断するわけだ▼最近では、血液や尿などからガンを検査する方法(リキッドバイオプシー)が身近になってきている。これはガンが体のどこかにできると、血液の中に特徴的に作られるタンパク質などの物質が増えることを利用して診断する。腫瘍マーカーと呼ばれる。例えば、前立腺の検査で、PSAが高い…
今年の立春は2月4日。寒い日はまだ続くが暦の上では春の始まりを意味し、関東でも既に梅(白梅)が咲き始めている。気象庁によれば今年関東で最初に咲いたのは銚子(千葉県)の梅で昨年より6日遅い開花だった。とはいえ毎年最も早く咲く那覇(沖縄県)では12月30日に開花していて、前年より1日、平年より14日早かった▼春は花粉症のシーズンの到来でもある。日本気象協会によれば関東・甲信では少ないながらも既にスギ花…
日本学術会議のより良いあり方とは何か? CSTI有識者議員懇談会が報告書を取りまとめた。ただし、まとめというにはまとまりのない内容になっている▼学術会議会員任命拒否問題をきっかけに、学術会議のあり方について検討が始まり、自民党PT、学術会議ともに報告を取りまとめ、政府としての改革の方向性を決めるため、CSTI有識者議員での議論が9回非公開で行われてきた。これまでの議事概要を見ると、科学的助言機能の…
「医食同源」ということばがあるように、食事は我々の健康に欠かせない大切なものである。今年も食べた人がいるだろうが、新年1月7日の朝食に食べる七草粥の習慣なども、健康を願う昔の人の知恵だろう▼農林水産省「数字で見る日本の食(2018年度食育白書から日本の現状を紹介)」によれば、第3次食育推進基本計画において、食事面で健康のためにするよいこととして、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日2回以上ほぼ…
令和4年がスタートした。多くの人が神社仏閣の前で、あるいは山や海で初日の出を仰いで、「今年1年、幸せな日々を送れますように」と祈ったことだろう▼幸せになりたい。誰しも思うことではあるが、そう願うならば、よく知られた「情けは人のためならず」ということわざを思い起こしてほしい。この言葉の本来の意味は「人に情けをかければ、その人のためになるばかりでなく、巡り巡って自分のためになる」ということである。これ…
© 2024 THE SCIENCE NEWS