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科学新聞の1面に掲載している『素領域』全文と、Web限定コラムをお読みいただけます。
九州など各地を襲った大雨は、山の貯水機能を麻痺させ、河川を氾濫させて、流域に多大な被害をもたらした。いまだ行方不明者の捜索も続き、あちらこちらで山の斜面が崩れ落ちている様子、生活の場が土砂に覆われしまっている被災地を目にすると胸が痛む。近年、異常な量の降雨(例えば1日に平年の1カ月分の雨が降る)が多くなっている。日本だけでなく、世界各地でも、こうした異常気象が起きている▼国内では様々な場所にセンサ…
ATR(国際電気通信基礎技術研究所)を中心とする研究グループが開発したニューロフィードバック技術の精神疾患治療に向けた開発が進んでいる。その一つがAMED-DecNef多精神疾患データベースの構築である▼鬱病、統合失調症、自閉症スペクトラム障害、強迫性障害、疼痛などの患者および健常者の安静時脳機能画像を昨年度までに1928例収集し、今年度中には約2200例が集まる予定。安静時のfMRI全脳画像を解…
AI(人工知能)の技術発展が急速に進み、深層学習に基づく応用なども盛んで、様々な実用化が進んでいる。情報通信研究機構(NICT)が開発した、ニューラル機械翻訳(NMT)もその一つである▼これは、脳の神経回路を模したニューラルネットワークを用いた自動翻訳技術で、膨大な対訳データを使って学習したニューラルネットワークを使って翻訳する▼この技術は、従来の統計翻訳(SMT)技術よりも翻訳精度が大幅に改善さ…
米国のトランプ大統領は6月1日、地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」からの離脱を正式に表明した▼トランプ氏は、もともと事あるごとに離脱をちらつかせていたが、それが現実となると何か虚しさを、いや怒りさえ覚える。米国は、中国に続く世界で第2位の温室効果ガスの排出国であり、オバマ前大統領は地球温暖化対策にはかなり熱心に取り組んできただけに、この落差ははかり知れない▼「アメリカ第一主義」で、これから自…
多摩六都科学館は先日、東京大学大学院農学生命科学研究科附属生態調和農学機構と相互協力協定を締結した。機構は同大学の近隣の附属農場、附属演習林等を含み2010年に教育研究施設として改組し設立された。両者の最寄り駅は共に西武新宿線の田無駅である▼同科学館は昨年、年間来館者数が25万人を超え、過去最高となった。古いデータだが、文部科学省の科学技術・学術政策研究所が07年に発表した「科学館・博物館の特色あ…
科研費審査システムの改革がいよいよ本格的に始まる。9月の公募からは、審査区分・審査方式が全面的に改定される▼そもそも科研費システムを改革しなければならない背景には、学問領域の細分化とそれを再構築することで研究の新たな展開を図っていくという世界的な動きがある。科学技術・学術政策研究所が2年ごとに公表しているサイエンスマップでは、被引用数が高いトップ論文で構成されるホットな研究領域を共引用関係から抽出…
最近、将棋のプロ棋士である佐藤天彦名人がコンピューターソフトと勝負したり、世界最強といわれる中国囲碁棋士の柯潔九段が人工知能と勝負したりして、いずれも人間が負けるというニュースが相次いだ▼ついにAIが人間を超える時代が来たのかといった報道などもあり、ショッキングな話として受け止めた人もいるだろう。一定ルールの中で行われるゲームの世界とはいえ、ゲームソフトやAIの進歩に驚きを隠せない気持ちである▼い…
膵臓ってどんな臓器なのか。食物の消化を助ける膵液やインスリンなどのホルモンを生産している臓器だということくらいはご存じの方も多いことだろう▼では、どんな形をしていて、体のどこにあるのかというと筆者を含めてだがあやふやになってくるのではないだろうか。まず位置だが、胃と背骨の間に目立たないように収まっている。形といえばピーマンに似ていて、膵頭部(ヘタの部分)は十二指腸に囲まれており、膵尾部は脾臓と結ば…
かつて造船王国だった日本は、前世紀末に近隣国に建造量トップの座を奪われた。近年、業界内の統合、再編等で持ち直しつつあるが、依然として建造量は世界3位だ。今後、高機能、高品質の船を造る日本に顧客が戻る可能性はあるが、トップ奪還は難しい▼日本の造船業の不振の根には、現在でもニーズが高い特殊な船舶(例えば高速船やLNG船など)をオリジナルで造れなかったことなどがある。1980~90年代には、国や民間で、…
先日、沖縄県の西普天間住宅地区における国際医療拠点の形成に関する協議会の報告書が公表された。米軍から返還された西普天間住宅地区に琉球大学医学部・附属病院を移転するとともに、国際的な医療拠点として再開発するため、どのような機能を整備するべきかを取りまとめたものだ▼高度医療・研究機能の拡充、地域医療水準の向上、国際研究交流・医療人育成という3つの機能を整備し、バイオ産業の基盤として、創薬開発等を通じて…
国は、東京都や経済団体、企業などと連携して、2020年の東京オリンピック・パラリンピックへ向けた「働き方改革」の運動を推進することとし、今年から7月24日を「テレワーク・デイ」として位置づけ、企業や団体、官公庁の社員や職員が、その日にテレワーク(情報通信技術を利用した柔軟な働き方)を一斉実施するよう呼びかけていく▼これは、2012年のロンドン五輪・パラリンピックの際に、交通混雑でロンドン市内の移動…
「ユマニチュード(Humanitude)」という用語がある。認知症の方の介護にあたられた人、あるいはあたられている人ならばご存じの言葉だろう▼ユマニチュードとは、2人のフランスの専門家が編み出した知覚、感情、言語による包括的なケア技法で、会話ができないくらい進行した認知症の改善に劇的な効果をもたらすとして注目されているものだ。その効果をもたらす技法は、「見る」「話す」「触れる」「立つ」の4つの柱か…
科学技術の進展と共に医療技術は日々進化し、それに伴い医師に必要とされる知識や技能も高度化している▼文部科学省は今年3月、大学における医学部学生が卒業(臨床実習開始前)までに最低限履修すべき教育内容をまとめた「医学教育モデル・コア・カリキュラム」の改訂版を公表。改訂版は「多様なニーズに対応できる医師の要請」を目指して取りまとめられた。さらに現在、日本の大学医学部では、国際基準に沿った教育を行うべくカ…
宇宙で植物はどう育つのか。擬似微小重力環境でトマトを育てながら、その影響を見る。観察の結果、アブラゼミの羽化場所決定には、何らかのフェロモンが働いているのではないかと誘引物質の特定を進める。ゴルフボールの表面を見て、表面加工によってプロペラの効率を上げることができるのではないかと120通りものパターンを試して、最も効率の良い加工方法を見つけ出す。いずれも高校生たちが小学生や中学生時代から取り組んで…
最近やたらとスパムメールが多くなった。「オフィスのプロダクトキーが盗まれているので検証してください」と、マイクロソフトを騙ったメールも来る。大変だとばかりに認証などクリックしたら、それこそ大変なことになる▼コンピューターやインターネットなどのセキュリティ企業が公表する最近のセキュリティ調査結果では、ランサムウェア「Locky」への感染をねらったスパムメールが倍増しているという▼感染するとパソコンな…
日本の南極観測は、昭和31年から開始され、60年が過ぎた。筆者も何度か南極に赴く隊長や成果をあげて戻った隊員を取材し、興味深い話を聞くことができた▼南極観測というと、どことなく男のロマンの世界だと思われがちだが、最近では女性が当たり前のように活躍しているという。初めて女性が参加したのが1987年で、これまでに120人ほどになる。中には越冬をする隊員もいるそうだ▼現在、第58次越冬隊が現地で様々な業…
運営費交付金は毎年減らすが、効率的にイノベーションを起こして、社会に資する研究をしろ。政府はなかなかの難題を国研や大学に提示している▼先日、先端研究設備・機器を有する研究機関の実務者が集まるワークショップに参加してきた。実務者間で研究機関個別の課題や共通の課題を共有するとともに、海外事例と国内との違い、設備や機器に応じた運用戦略、機器開発時の企業との関係、技術専門職の認定制度など多岐にわたる議論が…
1㍍以上に育つ海ぶどうは、実は単細胞生物である。先日、沖縄科学技術大学院大学のサイエンスカフェで30代の若手研究者から話を聞いて初めて知った。また、藻類に対する遺伝子のノックアウトやノックインなどは非常に難しいのだという。海洋生物学の専門家であれば常識であるこうしたことも、分野が少し異なるだけで知らないことは多い▼一方、計測技術や計算科学、操作技術の発展によって、分野間の距離は縮まりつつある。例え…
電波の最大出力が大きくて、医療機器に与える影響が生じやすい第2世代携帯電話サービスが平成24年7月に終了したことなどを踏まえ、平成26年8月に、医療分野における携帯電話等の使用に関する指針が改訂された▼これによって、それまで使用が原則禁止されていた病院などの医療機関でも、携帯電話使用が原則認められることとなり、院内における携帯電話使用が可能になった病院は急増した▼総務省によれば、全面利用不可の病院…
「暦の上だけではなく本当の春も間近」。3月となると暖かい季節の足音が身近に感ぜられ、何となくウキウキした気分になる▼ただ「冗談じゃない。これからが憂鬱な時期なのだ」と気分が落ち込んでしまう人が、最近のデータによると日本人の4人に1人の割合でいるという。花粉症に悩む人のことだ。そもそも花粉症とは、その名の通り植物の花粉が原因で起こるアレルギー疾患のこと。アレルゲン(抗原)である花粉が目や鼻から入ると…
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