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コラム・素領域

科学新聞の1面に掲載している『素領域』全文と、Web限定コラムをお読みいただけます。

2018年2月23日号 素領域

今年6月頃に宇宙航空研究開発機構の探査機「はやぶさ2」が小型惑星「リュウグウ」に到着する▼約1年半ほど滞在し、観測を進め、着陸できそうな場所を探り、砂の採取にチャレンジする。リュウグウは、有機物や含水鉱物をより多く含み、太陽系の起源・進化、生命の原材料物質の解明が期待される原始的な天体。2020年末頃に、成果を抱いて地球に凱旋する予定だ▼ところで、今年はこうした宇宙のロマンを満喫できるイベントが多…

2018年2月16日号 素領域

生態系において、相互に利益のある共生(相利共生)は、マメ科植物と根粒菌によるものがよく知られている。身近なところでは、ヒトを含めた真核生物の細胞内のミトコンドリアや植物の葉緑体も、かつては細胞内共生細菌だったと考えられ、いまでは我々が生きていくのになくてはならない存在だ▼こうした共生関係については近年、農業利用に向けた研究がめざましく進展している。作物に特定の細菌を感染させることで、他の細菌からの…

2018年2月9日号 素領域

人工知能関連のトップ1%論文占有率は、米国24・6%、中国19%となっており、日本は2・1%でしかない。研究開発投資額も米中に比べて、日本の規模は非常に小さい。人材も同様だ。こうした中で日本に勝つチャンスはあるのか▼産業技術総合研究所人工知能研究センター長の辻井潤一氏によるとAI研究のフェーズがシフトしているという。つまり、現在主流の巨大なデータセットを学習させるAIから、IoTやロボットと組み合…

2018年2月2日号 素領域

AI(人工知能)が進化し、様々な分野で応用開発の動きが進展している。AI自体の研究開発も盛んである。そして、周辺ではインターネットやモバイル端末が急速に普及し、IoT、ビッグデータ、クラウドなどICT(情報通信技術)の躍進が止まらない▼他へ目を向けても、ロボット工学や自動運転、量子コンピューター、iPS細胞、宇宙ステーション等々、多くの分野で目覚ましく発展している科学技術がある▼かつて、技術開発に…

2018年1月26日号 素領域

改めて歯の大切さを認識させられる研究成果が出された。歯周病がアルツハイマー病の症状を悪化させるというのだ▼その仕組みが日本の研究機関、大学の共同研究で明らかになった。それによると、歯周病菌の毒素がアルツハイマー病の原因とされるアミロイドβという脳の”ゴミ”を増やし、認知症の症状を悪化させるのだという。そもそもアルツハイマー病は、認知症の約6割を占め、脳の神経細胞の中にアミロイドβタンパク質がたまり…

2018年1月19日号 素領域

大抵の新しいことは予定通りにいかないことの方が多い。特に先端的な分野ではよくあることだ。テクニカルな点だけでなく計画そのものに不安要素があったりする。しかし、うまくいかない過程から、画期的な発見があったりする。だから研究は面白いし、奥深い。うまくいかない方が多くの知見を得られることもある▼昨年、民間企業の宇宙開発・利用への参画を促す宇宙2法が施行された。宇宙ベンチャー各社が資金調達に成功しており、…

2018年1月12日号 素領域

今年度補正予算に盛り込まれた内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)では、従来の「自動運転」や「革新的燃焼技術」など、産学官による技術開発だけでなく、同時に大学改革を進めるという▼近年の科学やイノベーションを通じた大学改革の成功例としては、WPI(世界トップレベル研究拠点プログラム)やCOI(センター・オブ・イノベーションプログラム)がある。WPIはサイエンスを軸に研究拠点を運営し、そ…

2018年1月1日号 素領域

昨年は米国のトランプ政権誕生による世界情勢の混乱や、北朝鮮の核開発にともなうミサイル発射、相次ぐ国際テロ事件など脅威を感じることの多い1年であった▼国内でも日本を代表する企業の不正が相次ぎ、その国際的信頼低下が心配されるなど、暗い話題が目立った。救いは卓球やバドミントン、スキージャンプ、フィギュアスケート、スピードスケートなど、スポーツ界での日本選手の活躍だった▼科学技術の世界では、残念ながら昨年…

2017年12月22日号 素領域

人間と犬との付き合いは長い。ロシアの遺跡から約1万7千年前の犬の骨が見つかっているのだ▼しかもその骨は、他の狩猟対象となっている動物の骨とは違い、きちんと埋葬されていた。当時の人間は、狩りのパートナーとして犬と一緒に暮らしていたことが推測される。このように人間と深い関係を保ってきている犬ではあるが、最近、その親密度を証明する研究データが発表されている▼スウェーデンのチームの研究成果で、一人暮らしで…

2017年12月14日号 素領域

大学附属病院等による医師主導治験が増加傾向をみせている。もちろん製薬企業が実施する治験と比較すれば件数は少ないが、少しずつ増加している▼医師主導治験は03年の薬事法改正により始まり、それまで製薬企業等のみが許可されていた治験を医師も行うことができるようになった。製薬企業等が採算等の理由で実施しなかった、あるいは海外では承認されているが日本国内では未承認薬の適応外使用を対象としている。例えば小児疾患…

2017年12月8日号 素領域

大学改革を加速していきたい。林芳正文部科学大臣ではなく、内閣府の松山政司科学技術政策担当大臣の発言だ▼現在の大学改革は、臨時教育審議会の第2次・第3次答申(86~87年)から始まった。これを受け、当時の文部省は、産学連携や異分野融合を進めるため奈良先端大や北陸先端大を、大学共同利用機関での学位取得を可能にするため総合研究大学院大をそれぞれ設置。また、国立大学に民間の寄附講座や寄附研究部門を作ること…

2017年12月1日号 素領域

弊紙の過去の新聞を見ていたら、平成22年5月14日号に「戦略なき予算削減に危惧」の見出しで、日本化学会をはじめとした国内の科学・技術関連の26学会がまとめた提言の記事が載っていた▼当時は連立の民主党政権が予算編成で事業仕分けを導入した時代で、提言では純減された科学技術関係予算を危惧し、日本の中長期的国家戦略として科学力・技術力強化などのため、研究教育予算・投資の改善を求めている▼しかし、その後の科…

2017年11月24日号 素領域

もうかれこれ30年以上前になろうか、当時の文部省宇宙科学研究所に大林辰蔵(故人)という名物教授がおられた▼大林教授は日本の宇宙開発の先駆け的な存在で、スペースシャトルを利用し、東京の空にオーロラをつくろうという実験を計画し、実行した。成否はともかく、宇宙に対するロマンを大いにかき立てられたものだ。そして今度は2019年の夏、夜空に「人工の流れ星」を輝かせようとする世界で初めての実験を民間企業が進め…

2017年11月17日号 素領域

厳戒態勢の中、トランプ米国大統領が来日したが、日米首脳の会談の内容よりも、その動向や安倍首相との蜜月ぶりに注目が集まっていたようだ。首脳ワーキングランチや会談では、来年3月に日本で開催する第2回国際宇宙探査フォーラム(ISEF2)に触れ、宇宙探査分野における協力を推進することが確認された。米国では、トランプ政権になってから宇宙探査に積極的に取り組み始めた印象がある▼米国政府は10月にナショナル・ス…

2017年11月10日号 素領域

オーストリアと聞くとどういうイメージを持つだろうか。ウィーンであればオペラやハプスブルク家の宮殿、アルプスにいけばスキーをはじめとするウィンタースポーツ。観光産業の印象が強いが、実は日本以上に科学技術立国なのだ▼日本政府はこの十数年、政府研究開発投資をGDP比1%にすることを目指して、研究開発投資を増やすと標榜してきた。しかし、日本全体の研究開発投資は3・56%と大きいが、政府研究開発投資は地方分…

2017年11月3日号 素領域

IBMリサーチのバイス・プレジデントであるボブ・スーター氏が、商用に利用可能な汎用量子コンピューター「IBM Q」について、報道関係者などを集めて概説した▼同氏は「量子コンピューターは量子力学に基づき、量子ビット(Qビット)で計算するコンピューターである。そのため、情報をビット列で処理するクラシカル・コンピューターが解決できない問題を解くのに適している」と紹介した▼クラシカル・コンピューターは1か…

2017年10月27日号 素領域

この世に生を受けたからには、自分の祖先、つまりルーツについて関心を持つ人も多いことだろう▼筆者の場合も祖父母や両親に聞いてみたことはあるが、なかなか判然とした結果には至らなかった。ところでアメリカでは、自分の口の中をこすった綿棒を送り、DNAをチェックするだけで簡単に祖先がどこからやって来たのかが分かるテストの人気が急上昇中である▼アメリカは日本とは違って建国して数百年と歴史が浅いし、ヨーロッパや…

2017年10月20日号 素領域

厚生労働省による平成25年の国民生活基礎調査では、65歳以上の要介護者等の介護が必要になった原因は脳血管疾患(脳卒中)が17・2%と最も多くを占め、年々増加している。さらに支援者の高齢化によるいわゆる老々介護も問題になり、健康寿命をいかに長期化させるかが大きな課題となっている▼それに対し、近年ロボット技術を応用したヒトの歩行機能を補助する装置の開発が華々しい成果をあげている。サイバーダインの「HA…

2017年10月13日号 素領域

今年のノーベル物理学賞が重力波の観測に貢献した、米国の3人の研究者に贈られることが決まった。アインシュタインの相対性理論では、大きな質量の星など強力な重力場がある時、重力による空間の歪みによって光はゆっくりと進む。この空間の歪みが波のように伝わるのが重力波だ▼重力波は空間の歪みそのものであるため、電磁波や光などと異なり、様々な環境の影響を受けない。そのため、宇宙の真の姿を映す新たな観測手段として期…

2017年10月6日号 素領域

この素領域で以前、スマートフォンが普及し過ぎてしまい、街中などで歩きスマホの迷惑ぶりが目立ち、何とかならないかという話を書いた▼そうしたら今度は、米国の南カリフォルニア大学が、スマホが親子関係の悪化を招いているという調査結果を公表した。日本のティーンエージャーと親を対象に、スマホの使用習慣と、それに関する態度を調査したものである(本紙前号で紹介)▼それによると、子も親もスマホなどに四六時中没頭して…

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