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毎週金曜日発行

コラム・素領域 2019年

科学新聞の1面に掲載している『素領域』全文と、Web限定コラムをお読みいただけます。

2019年7月26日号 素領域

またまた低い投票率となった参議院議員選挙だが、今回も科学技術政策は争点にはならなかった▼各政党を対象に一般社団法人カセイケンが実施したアンケート調査の結果では、公的研究開発投資は「大幅に増やす」「やや増やす」、公的投資に対する科研費割合は「増加」「現状維持」と各党に違いはなかった。一方で、デュアルユースについては大きく意見が異なる。さらに氷河期時代の任期付き研究員の問題については、多くの党が独自の…

2019年7月19日号 素領域

総務省が発表した「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数(2019年1月1日現在)」によれば、日本人の人口は1億2477万6364人で、対前年0・35%(43万3239人)の減少となり、2009年をピークに10年連続の減少となった▼出生者数から死亡者数を引いた自然増減数はマイナス44万2564人であり、12年連続の自然減少となった。調査開始した1979年度以降では最大の減少数である。出生者数…

2019年7月12日号 素領域

「笑う門には福来る」とはよく言ったものである。笑いが心や体の健康によいことは医学的にも実証されつつある▼つい最近、山形大学医学部の研究チームが発表した調査研究でもそれが裏付けられた。県内7つの市に在住する40歳以上の男女約1万7千人を対象に、8年間にわたり追跡調査を行った。その結果、普段ほとんど笑わない人は、週1回以上よく笑う人に比べて死亡率が約2倍も高く、しかも心筋梗塞や脳卒中などの発症リスクも…

2019年7月5日号 素領域

研究現場でヘリウムの供給不足とそれに伴う高騰への危機感が高まっている。ヘリウムは原子番号2番の元素で、水素に次いで軽い。無色、無臭で、他の元素と反応しないため安全で、この性質からMRI、半導体をはじめとした様々な産業、医療、研究分野で用いられている▼大気中にもごく微量含まれるが、採算性を考慮し、天然ガスから分離・精製して生産される。主な産出国は、アメリカ、カタール、アルジェリア、ロシア、ポーランド…

2019年6月28日号 素領域

北欧エストニアでのロボットワークショップに出席して、日本とエストニアの架け橋になりたい-クラウドファンディングで約48万円を集めたのは、東京都の小学5年生・井上美奈さん(10歳)だ▼何かを表現することやアイデアをかたちにすることに興味を持って、スタートアップ体験イベントや、エストニアで2001年に始まったロボット×アントレプレナー教育ネットワークの日本版に参加し、80代のプログラマー・若宮さんら多…

2019年6月21日号 素領域

茨城県つくば市で6月8日と9日に開催された「G20茨城つくば貿易・デジタル経済大臣会合」では、人間中心の考えを踏まえたAIの原則について参加国・機関の合意がはかられた。その方向でAIの開発・利用が今後も進められてほしいと願う▼コンピューターをはじめ、最先端科学技術の導入にあたっては、明るいプラス面だけでなく、改革がもたらす暗いマイナス面があることを常に忘れてはならない▼そのことは過去の歴史が教えて…

2019年6月14日号 素領域

推理小説やドラマなどでは、主犯と思われる人物を追い詰めていくうちに、別の人物が主犯であったり、思わぬ共犯者が現れたりする▼これと同じようなことは医学・医療分野でも起こりえる。アルツハイマー型認知症の研究がそうである。認知症の原因の7割を占め、長らく症状を起こす主犯として考えられていたのがアミロイドβである。だが最近、このアミロイドβを取り除いたとしても認知機能の低下を防げないことが分かってきた▼そ…

2019年6月7日号 素領域

環境省は今年、5月30日(ごみゼロの日)から6月5日(環境の日)を経て6月8日(世界海洋デー)前後までを「海ごみゼロウィーク」とし、海洋ごみ問題の周知啓蒙と海洋流出防止を目的とした一斉清掃活動を日本財団と協力して実施した▼人の生活圏から排出された廃棄物は海洋に流出し、海洋汚染や漂着ごみを発生させる。この防止は国境を越えた世界的な課題と認識されている。近年では、プラスチックごみが海洋で5㍉㍍以下のマ…

2019年5月31日号 素領域

世界各国が研究開発投資を増大させ、システム改革を進める中、日本の論文における競争力はおしなべて低下しているが、その中でもいくつかの領域で、日本が競争力を維持している分野がある。その一つがガン研究だ▼2015~17年(3年平均)の生命科学領域におけるトップ10%論文の国際シェア順位を見ると、米中2強がほとんど1位と2位を独占し、行動神経科学など一部で英国が2位に食い込んでいる。日本は多くが5位以下だ…

2019年5月24日号 素領域

東京一極集中や人口減少、地域経済衰退などの傾向が一向に止まらず、地方再生が必至だ。過日、国が進める次の第Ⅱ期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」策定へ向けて、経済同友会も一層の活動推進を提言した▼なぜ、こうした傾向が止まらないのか。特に東京一極集中は古くから言われてきた問題であり、今も進行中の課題だ。それだけ東京は誰にも魅力のある場所なのだろう▼国の中枢機関があって、多くの多彩な企業や文化施設、娯楽…

2019年5月17日号 素領域

人間、いつまでも向上心を持たなければいけないということを思い知らされた▼札幌在住の101歳の男性が、この春放送大学を卒業したのである。しかも、授業のある大学のキャンパスに通い詰めたというのだから頭が下がる。「自ら学ぶからこそ楽しい」。ご本人の言を聞くとますます耳が痛い。このように高齢で何かを成し遂げた御仁は歴史的にも珍しくない。伊能忠敬は71歳まで測量を続け日本地図を完成させたし、ファーブルは84…

2019年5月10日号 素領域

今年は例年より長い大型連休となり、途中で新たな元号「令和」の時代を迎えた。これまでの改元は天皇の崩御による悲しみが伴っていたが、今回は退位によるもので、前回とは異なる陽気な雰囲気が印象的だった。5月4日に行われた一般参賀では14万人が皇居を訪れ、東京駅付近から長蛇の列が続いていたという▼連休が終われば梅雨がすぐやってくる。気象庁の発表した梅雨入り予測によると、沖縄地方が日本で最も早く今年は5月9日…

2019年4月26日号 素領域

引っ越し手続きが煩雑で一部の手続きを忘れてしまった。死亡・相続となると数日間は仕事を休まなくてはならない。こうした経験を持つ人も多いだろう。政府は、引っ越し、死亡・相続、社会保険・税手続きをワンストップ化するためのロードマップを公表した▼異動や転職などで、転居する際、引っ越し先の契約や荷づくりなどに加え、引っ越し前には転出届、印鑑登録、学校や保育園等の子供の転校・転園の手続きなどがあり、さらに引っ…

2019年4月19日号 素領域

総務省は4月11日、携帯電話4社に対し、5G(第5世代移動通信システム)商用化のための特定基地局開設計画を認め、認定書を交付した▼NTTドコモ、KDDI/沖縄セルラー、ソフトバンク、楽天モバイルに、5G用として、3・7GHz帯/4・5GHz帯と28GHz帯の2種類の周波数がそれぞれ割り当てられた▼4月に入り、米韓の通信事業会社が5Gサービスを開始するなど、世界中で参入競争が過熱している。日本の4社…

2019年4月12日号 素領域

電車の車窓から眺めると遠くの山並みが、春の霞によりぼんやりとかすんで見える▼これは植物の蒸散作用が活発化することで、大気中の水分が微粒子状となり、気温の低下などによって目に見える状態になる現象で、文部省唱歌などに歌われるだけならばほほえましいのだが、最近では、中国から飛来する黄砂によっても引き起こされるのだから穏やかではない。大陸から舞い上がった黄砂の微粒子とともにPM2・5が偏西風に乗り、日本に…

2019年4月5日号 素領域

気象庁は今年の東京のソメイヨシノの開花日を3月21日とし、満開日を27日とした。昨年より3日遅く、平年より7日早く満開となった。すでに周囲のソメイヨシノの盛りが過ぎてしまったという方は4月中旬ごろから満開を迎える東北以北を狙ってみてはどうだろうか▼先だってかずさDNA研究所らのグループは、ソメイヨシノのゲノム解読を行うと共に、開花に至るまでの蕾や芽の転写産物の解析を行い、開花予測を行うための遺伝子…

2019年3月29日号 素領域

合成生物学が進展し、人工ゲノム・人工ウイルス・人工細胞などが手軽に作製できる時代になってきた。これにより、新たな社会的問題が生まれつつある▼クレイグ・ベンター研究所は2010年、人工的に合成されたゲノムの遺伝情報だけで増殖するマイコプラズマを世界で初めて作製することに成功した。人工生命体の創生につながるものとして世界中から注目を集めた。4000万ドルの研究費と15年の歳月を要した▼技術の進展により…

2019年3月22日号 素領域

近年、自動翻訳技術の精度が急速に向上し、利用が広がりつつある。そうした中で、総務省とNICT(情報通信研究機構)が都内で開催した「第2回自動翻訳シンポジウム」を聴講してきた▼会場は用意された椅子席がほぼ満杯状態で、自動翻訳に寄せられる関心の高さを実感した。当日は400人程度が集まったようだ。この種の講演会としては上々の人気といえるだろう▼シンポでは、NICTが開発・実用化した音声翻訳アプリ「ボイス…

2019年3月15日号 素領域

宇宙には地球と同じような惑星が一体どれくらいあるのだろうかと思いを巡らせる方も多いことだろう▼現在、地球と似ている太陽系外惑星が4千個ほど見つかっていて、世界各国で”第二の地球探し”が活発に行われ、生命の起源に迫ろうとしている。太陽系外惑星で注目されている星が複数ある。まず、プロキシマ・ケンタウリb(プロキシマb)で、太陽に近い恒星である赤色矮星「プロキシマ・ケンタウリ」のハビタブルゾーン(地球型…

2019年3月8日号 素領域

先日、すばる望遠鏡の20周年パーティーが国立天文台と地元日系人商工会議所の共催で開かれた。「すばる」が地元に溶け込んでいる証しであるかのようにアットホームな雰囲気だった▼「すばる」が位置するハワイ島は、ホノルルなど日本人が想像するハワイとは異なった、自然が厳しい場所だ。富士山より高い標高4205㍍の神聖な山・マウナケア山頂に「すばる」は設置されている。北半球の全天、南半球の90%の天体を観測できる…

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