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科学新聞の1面に掲載している『素領域』全文と、Web限定コラムをお読みいただけます。
我々は常に感染症のリスクにさらされている。感染症といっても、ごく軽度の風邪から致死率の高いエボラ出血熱や狂犬病まで様々で、風邪やインフルエンザならば日本でも毎年流行する。一方で、マラリア、結核、エイズは世界3大感染症といわれ、その伝搬性や対策経費の大きさから世界保健機関(WHO)もこの対策の国際協力を推進している▼2014年、東京の代々木公園を中心とした海外渡航歴のないデング熱感染者の発生は、大き…
「発明の日」の4月18日を含む一週間(16~22日)は、科学技術週間だ。各大学や研究機関等では、一般公開や子供科学教室など、様々なイベントが行われる▼近年、若者の科学技術離れだけでなく、大人の科学的視点や知識の不足から、あたかも科学的根拠があるかのような謳い文句があふれ、その商品やサービスが堂々と売られていることも多いのが現実だ▼科学技術・学術政策研究所の調査によると、大学生の59・2%が科学技術…
言語の壁をなくす「自動翻訳技術」が、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを前に注目されている。近年のAIを用いた研究開発で翻訳精度が向上し、実用に耐え得る自動翻訳システムの開発が進んでいるためだ▼そうした中、先日、世界の言葉の壁をなくすグローバルコミュニケーション計画を進めている総務省とNICT(情報通信研究機構)が、自動翻訳シンポジウムを都内で開いた▼会場には多くの参加者が集まり、関心の…
ハードボイルド小説に出てくる主人公と言えば、ニヒルで孤独をこよなく愛する人物として描かれることが多いようである▼筆者は、この孤独を愛することについて、一人になりたいと思うその気分が好きで、感情がそうさせているのだと思い込んでいた。ところが最近の研究によると、一人になりたいとの感情は遺伝子(孤独遺伝子)がそうさせているというのである。集団が天変地異や重大な感染症などにさらされた時に、孤独遺伝子を持っ…
92年前の3月16日。ロバート・ゴダードが液体燃料ロケットの打ち上げに成功した。細やかなコントロールができる液体燃料ロケット技術は日本の基幹ロケットにも採用されており、現代の宇宙開発に欠かせないツールだ▼先月、米国のスペースXが大型ロケット「ファルコンヘビー」の打ち上げに成功。搭載品の赤い電気自動車は太陽周回軌道に投入された。新型ロケットはその高い輸送能から、今後の宇宙探査に活用されていく可能性が…
次世代医療基盤法が今春、施行される。本人が拒否しない場合、個人の医療情報(診察歴、投薬歴、手術歴、健診情報、各種検査値等)を医療機関から認定事業者に提供でき、認定事業者は、これら情報を匿名加工した上で、利用を希望する研究開発の現場に提供できる▼大規模な医療情報を統合的に解析・分析することで、ある患者に対して様々な治療選択肢の中から、最適なものを選ぶことが可能になるほか、疾患Aと疾患Bとの関連性が明…
総務省統計局「国勢調査」資料によると、戦後、3大都市圏を含む関東、近畿、東海ブロックの人口が増加し続けており、特に戦後一貫して、東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)を含む関東への集中が続いているという▼資料によれば、2015年の時点で、関東地域の人口が全国に占めるシェアは35%以上で、ほぼ日本の人口の3分の1が関東地域に集中していることになる。東京圏だけでも30%近い▼いま、ICT(情報通信…
今年6月頃に宇宙航空研究開発機構の探査機「はやぶさ2」が小型惑星「リュウグウ」に到着する▼約1年半ほど滞在し、観測を進め、着陸できそうな場所を探り、砂の採取にチャレンジする。リュウグウは、有機物や含水鉱物をより多く含み、太陽系の起源・進化、生命の原材料物質の解明が期待される原始的な天体。2020年末頃に、成果を抱いて地球に凱旋する予定だ▼ところで、今年はこうした宇宙のロマンを満喫できるイベントが多…
生態系において、相互に利益のある共生(相利共生)は、マメ科植物と根粒菌によるものがよく知られている。身近なところでは、ヒトを含めた真核生物の細胞内のミトコンドリアや植物の葉緑体も、かつては細胞内共生細菌だったと考えられ、いまでは我々が生きていくのになくてはならない存在だ▼こうした共生関係については近年、農業利用に向けた研究がめざましく進展している。作物に特定の細菌を感染させることで、他の細菌からの…
人工知能関連のトップ1%論文占有率は、米国24・6%、中国19%となっており、日本は2・1%でしかない。研究開発投資額も米中に比べて、日本の規模は非常に小さい。人材も同様だ。こうした中で日本に勝つチャンスはあるのか▼産業技術総合研究所人工知能研究センター長の辻井潤一氏によるとAI研究のフェーズがシフトしているという。つまり、現在主流の巨大なデータセットを学習させるAIから、IoTやロボットと組み合…
AI(人工知能)が進化し、様々な分野で応用開発の動きが進展している。AI自体の研究開発も盛んである。そして、周辺ではインターネットやモバイル端末が急速に普及し、IoT、ビッグデータ、クラウドなどICT(情報通信技術)の躍進が止まらない▼他へ目を向けても、ロボット工学や自動運転、量子コンピューター、iPS細胞、宇宙ステーション等々、多くの分野で目覚ましく発展している科学技術がある▼かつて、技術開発に…
改めて歯の大切さを認識させられる研究成果が出された。歯周病がアルツハイマー病の症状を悪化させるというのだ▼その仕組みが日本の研究機関、大学の共同研究で明らかになった。それによると、歯周病菌の毒素がアルツハイマー病の原因とされるアミロイドβという脳の”ゴミ”を増やし、認知症の症状を悪化させるのだという。そもそもアルツハイマー病は、認知症の約6割を占め、脳の神経細胞の中にアミロイドβタンパク質がたまり…
大抵の新しいことは予定通りにいかないことの方が多い。特に先端的な分野ではよくあることだ。テクニカルな点だけでなく計画そのものに不安要素があったりする。しかし、うまくいかない過程から、画期的な発見があったりする。だから研究は面白いし、奥深い。うまくいかない方が多くの知見を得られることもある▼昨年、民間企業の宇宙開発・利用への参画を促す宇宙2法が施行された。宇宙ベンチャー各社が資金調達に成功しており、…
今年度補正予算に盛り込まれた内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)では、従来の「自動運転」や「革新的燃焼技術」など、産学官による技術開発だけでなく、同時に大学改革を進めるという▼近年の科学やイノベーションを通じた大学改革の成功例としては、WPI(世界トップレベル研究拠点プログラム)やCOI(センター・オブ・イノベーションプログラム)がある。WPIはサイエンスを軸に研究拠点を運営し、そ…
昨年は米国のトランプ政権誕生による世界情勢の混乱や、北朝鮮の核開発にともなうミサイル発射、相次ぐ国際テロ事件など脅威を感じることの多い1年であった▼国内でも日本を代表する企業の不正が相次ぎ、その国際的信頼低下が心配されるなど、暗い話題が目立った。救いは卓球やバドミントン、スキージャンプ、フィギュアスケート、スピードスケートなど、スポーツ界での日本選手の活躍だった▼科学技術の世界では、残念ながら昨年…
人間と犬との付き合いは長い。ロシアの遺跡から約1万7千年前の犬の骨が見つかっているのだ▼しかもその骨は、他の狩猟対象となっている動物の骨とは違い、きちんと埋葬されていた。当時の人間は、狩りのパートナーとして犬と一緒に暮らしていたことが推測される。このように人間と深い関係を保ってきている犬ではあるが、最近、その親密度を証明する研究データが発表されている▼スウェーデンのチームの研究成果で、一人暮らしで…
大学附属病院等による医師主導治験が増加傾向をみせている。もちろん製薬企業が実施する治験と比較すれば件数は少ないが、少しずつ増加している▼医師主導治験は03年の薬事法改正により始まり、それまで製薬企業等のみが許可されていた治験を医師も行うことができるようになった。製薬企業等が採算等の理由で実施しなかった、あるいは海外では承認されているが日本国内では未承認薬の適応外使用を対象としている。例えば小児疾患…
大学改革を加速していきたい。林芳正文部科学大臣ではなく、内閣府の松山政司科学技術政策担当大臣の発言だ▼現在の大学改革は、臨時教育審議会の第2次・第3次答申(86~87年)から始まった。これを受け、当時の文部省は、産学連携や異分野融合を進めるため奈良先端大や北陸先端大を、大学共同利用機関での学位取得を可能にするため総合研究大学院大をそれぞれ設置。また、国立大学に民間の寄附講座や寄附研究部門を作ること…
弊紙の過去の新聞を見ていたら、平成22年5月14日号に「戦略なき予算削減に危惧」の見出しで、日本化学会をはじめとした国内の科学・技術関連の26学会がまとめた提言の記事が載っていた▼当時は連立の民主党政権が予算編成で事業仕分けを導入した時代で、提言では純減された科学技術関係予算を危惧し、日本の中長期的国家戦略として科学力・技術力強化などのため、研究教育予算・投資の改善を求めている▼しかし、その後の科…
もうかれこれ30年以上前になろうか、当時の文部省宇宙科学研究所に大林辰蔵(故人)という名物教授がおられた▼大林教授は日本の宇宙開発の先駆け的な存在で、スペースシャトルを利用し、東京の空にオーロラをつくろうという実験を計画し、実行した。成否はともかく、宇宙に対するロマンを大いにかき立てられたものだ。そして今度は2019年の夏、夜空に「人工の流れ星」を輝かせようとする世界で初めての実験を民間企業が進め…
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