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素領域

科学新聞の1面に掲載している『素領域』全文と、Web限定コラムをお読みいただけます。

2018年11月30日号 素領域

地質時代の前期-中期更新世境界(約77万年前~約12万6000年前)を「チバニアン」とするための日本の申請が、第2ステップである第四紀層序小委員会(SQS)の審査を通過した。審査員の6割が通過ラインだったが、約9割の審査員が日本の提案に賛同した▼地質時代は、地球上の岩石をその形成された年代に基づいて区分したもの。それぞれの地質時代の境界を地球上で最もよく示す地層が、GSSP(国際境界模式層断面とポ…

2018年11月23日号 素領域

ICT(情報通信技術)を農業分野に導入し、農作業の効率化や生産性向上、農作物の一層の高付加価値などを目指す「スマート農業」の動きが、日本でも進みつつある▼矢野経済研究所が行ったスマート農業市場調査では、その国内市場規模は2017年度で約129億円、2018年度は約147億円の見込みで、2024年度には387億円まで伸び、今後も拡大する予想だ▼市場対象となるのは、栽培支援(農業クラウドなど)、販売支…

2018年11月16日号 素領域

よく言われることなのだが「猛暑の年の冬は厳冬になりやすい」という。今年はどうだろうか。気を付けなければならないのが寒さ対策である▼猛暑の時は熱中症、厳冬ならば凍死の危険がある。凍死とは、体熱の放散が熱産生を上回り、体温調節機能の限界を超えて全身の機能障害に陥った結果、死に至ることである。当然ではあるが高温の時に限界を超えれば、熱中症となるわけである。ちよっと意外かもしれないが、一昨年の統計によれば…

2018年11月9日号 素領域

11月1日、衛星の開発から12年の歳月をかけて整備された日本の準天頂衛星システムによる世界初のセンチメートル級の衛星測位サービスが開始された。記念式典には安倍首相も駆けつけ、ソサエティ5.0(超スマート社会)の実現を導く技術とシステムを紹介した▼これまで数十㍍単位でずれることもあった米国のGPSの信号を補完するために、衛星「みちびき」が4機、主に日本の上空を飛んでいる。これまで困難だった山や高層ビ…

2018年11月2日号 素領域

大阪大学が新たに指定国立大学法人の仲間入りをした。国際的な競争環境の中で、世界の有力大学と伍していくとともに、社会や経済の発展に貢献する取り組みの具体的成果を積極的に発信し、大学改革の推進役としての役割が期待される▼指定国立大学になると、出資事業の対象が拡大され、例えば、子会社等による研究成果の活用によるコンサルティング、企業等を対象とした教育プログラムの提供等が実施できるほか、寄付金等の自己収入…

2018年10月26日号 素領域

グローバリゼーションの先頭を切って世界中の国々の様々な壁を壊してきたアメリカが、トランプ政権になった途端に保護主義を強め、今度は自ら壁を築き始めた。こんな身勝手はないと思う▼いま盛んに叫ばれているイノベーションもアメリカから始まったが、今後それが世界中に浸透したら、アメリカはまた違う戦略を言い出し始めるのだろうか▼これは、国家戦略というのは他国や世界のためにあるのではない。自国のためのグローバリゼ…

2018年10月19日号 素領域

ノーベル生理学・医学賞を京都大学の本庶佑特別教授が受賞した。2年ぶりの快挙で喜ばしい限りである▼免疫をガン治療に応用し、生かすための手がかりを見つけ、新しいタイプの治療薬の開発に結び付け、ガン治療に革命をもたらしたことが評価された。ただ、この喜ばしい話に水を差すわけではないが、近い将来日本がノーベル賞ばかりでなく、世界的な賞から見放される日、受賞者が出なくなる時期がくるのではないかとの懸念が叫ばれ…

2018年10月12日号 素領域

今年もノーベル賞が発表され、日本人では本庶佑氏がノーベル生理学・医学賞を受賞した。弊社一同、心よりお祝い申し上げます▼今後、授賞式が例年通り、ノーベルの命日である12月10日に、平和賞はオスロ市庁舎(ノルウェー)、それ以外の4賞はストックホルム・コンサート・ホール(スウェーデン)で開催される。今年は文学賞の延期が決まっているため、例年より1賞少ない授賞式となるとみられる▼ノーベル賞は1901年にア…

2018年10月5日号 素領域

AI人材を確保しなければ、米中に追いつくことも難しい。文部科学省は、統合イノベーション戦略推進会議の示したAI戦略案に対応して、人材育成を強化する▼すべての学生がどの学部に進学しても、数理・データサイエンスの基礎的な素養を身につけられるよう、全学的な数理・情報教育を強化する。拠点校とコンソーシアムによる標準カリキュラム・オンライン教材を着実に開発するとともに、協力校の整備による、標準カリキュラムを…

2018年9月28日号 素領域

あることにひどく夢中になっているのを「三度の飯より好き」という言葉で表現するようだが、これは、それに匹敵する状態にあることを示す調査結果だ▼ITセキュリティ企業のカスペルスキーが行った、グローバル意識調査「インターネットへの依存度とオフラインが原因のトラブル」の分析結果である▼調査結果では、回答者の29%が「スマホなどインターネットに接続している機器なしで外出するよりも、空腹時に食べ物がない方がま…

2018年9月21日号 素領域

アメリカの話題ではあるが、最近ちょっとした驚きが広がった。日本でも波紋を呼びそうな話だ▼全米大学医学部ランキングで常時トップ10に入っているニューヨーク大学医学部が、授業料を全面無償化すると発表したのだ。一部の優秀な学生に対する奨学金でも、経済的に恵まれず苦学している学生への配慮でもない。アメリカでは9月は入学時期でもある。これから入学する学生約100人、在学中の学生400人の全てを対象に授業料が…

2018年9月14日号 素領域

9月6日未明に発生した平成30年北海道胆振東部地震で被害に遭われた方々に謹んでお見舞い申し上げます▼今回の地震では、北海道で初めての震度7を記録しただけでなく、北海道電力管内全てで停電が起きた。震源地付近の厚真町では、緑色の山容は一変し、強震で表層が削がれ、茶色の土壌がむき出しになった。その山々の端では住宅が土砂に飲み込まれ多くの人が犠牲になった。大規模な土砂崩れの様子はJAXAの陸域観測技術衛星…

2018年9月7日号 素領域

先日開催された「イノベーション・ジャパン2018」では、数多くの興味深い研究成果が展示されていた。論文データなどからは国際競争力の低下が叫ばれているが、こうしたものを見ると日本の底力と可能性を感じられる▼明治薬科大学の井上元基助教は、ブドウ種子由来のポリフェノールを原料にした貴金属吸着剤を開発した。もともとは手術などで使う生体用接着剤を作ろうと思ってポリフェノールを架橋したりしていたが失敗し、結果…

2018年8月31日号 素領域

アジア最大級の分析機器・科学機器の専門展示会「JASIS 2018」が、今年も千葉市の幕張メッセを会場にして9月5日から始まる。会期は7日までの3日間である▼今回も出展各社の展示や新技術説明会をはじめ、コンファレンス、特別企画のライフサイエンスイノベーションゾーン、オープンソリューションゾーン、2大セミナーなど、多彩で豊富な内容だ▼そのため、聴きたい講演や技術セミナーなどが満杯で入れなかったり、講…

2018年8月24日号 素領域

夏休みを利用して海外旅行に行った方も多いことだろうが、そこで悩まされるのが時差ボケである▼時差ボケとは、数時間以上の時差がある地域間を、飛行機などで短時間に移動したことによって起こる。人間の持つ体内時計と生活時間との間に生まれるズレにより、眠気、食欲不振、集中力の低下などの身体の不調を招く。ただこの症状は、何も遠くの海外などに行かなくとも起こりえるのである▼土日や長期休暇などでゆっくりリラックスし…

2018年8月10日号 素領域

厚生労働省の平成28年医師・歯科医師・薬剤師調査によれば、同年12月31日時点での全国の医師数は31万9480人で、前回の平成26年度比で2・8%(8275人)増加している。総数における男性の割合は78・9%、女性は21・1%である。少なくとも平成8年からの総数は、数%ずつではあるが増加が継続している▼一方でWHOの統計によれば、OECD加盟国の人口千人あたり臨床医数は日本は2・3人で、下から4番…

2018年8月3日号 素領域

統合イノベーション戦略の実現に向けて、政府部内の実施体制が構築されつつあるが、イノベーション実現にはその足腰となる基盤が強くなければいけない。そのために政府が力を入れているのが大学改革だ▼同戦略には、大学改革のメニューとして、経営の改善、若手割合の向上、研究生産性の向上、国際化の推進について、具体策を示している。例えば、大学ガバナンスコードの策定、大学の再編、年俸制の完全導入、民間資金の獲得に応じ…

2018年7月27日号 素領域

翌日または当日の最高気温がおおむね35度C以上になることが予想される場合、気象庁は「高温注意情報」を発表して熱中症への注意を呼びかける。猛暑日が1週間以上も続いている地域が多い▼総務省消防庁のデータでは、全国で7月9日から15日の間に、熱中症により救急搬送された人は9956人に達している。昨年の同期間中の7414人に比べて2500人以上、3割以上の増加となっている▼都道府県別で昨年より救急搬送され…

2018年7月20日号 素領域

「DIYバイオ」なる言葉をご存じだろうか。DIYとは、自身でやるという意味のDo It Yuorselfの略だ▼素人が自分自身で何かを作ったり修繕したりすることで、一頃、日曜大工などでもてはやされた。このDIYにバイオを付けた造語がDIYバイオで、大学や研究機関、企業の研究室に属さず、自宅などでバイオテクノロジーの実験を行う活動だ。最近、米国を中心に話題となっている▼これを可能にした背景には、DN…

2018年7月13日号 素領域

サッカーロシアW杯で、FIFAランク61位の日本が格上のチームに勇敢に挑んだ姿は見ていて胸が熱くなった。優勝候補のベルギーに負けはしたが、国民にベスト8進出の夢を見せてくれた▼スポーツイベントは今月も続き7日に欧州の自転車レース「ツール・ド・フランス」が開幕した。105回目のレース開幕直前には、4連覇を狙うクリス・フルーム選手が禁止薬物(喘息治療薬)の過剰摂取問題で主催者が出場拒否したという報道が…

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