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科学新聞の1面に掲載している『素領域』全文と、Web限定コラムをお読みいただけます。
自動運転への期待が高まっているが、自動運転車には、道路交通法で定める交通法規に従った運転をするようにシステムが構築されるのだろうか。そうなるなら、大いに期待できることになる▼危険で乱暴な運転などがなくなり、交通事故が減って国民の安全な暮らしにつながるからだ。定められたスピードを超えて運転するのは法規違反だ▼また、日常でたびたび見かける黄色信号で通過する前のクルマの後ろに付いて、赤信号になることが十…
知人でこんな人がいる。定年後に第二の人生を新たな職場で過ごし、そして今また新たな仕事を見つけるための活動をしているのだ▼もうあくせく働くことなく悠々自適に過ごしたらと思う。一方で、仕事を通して社会との接点をもつことは大切で、特に高齢者になればなるほど健康面での良い影響をもたらすと言われている。それを数値化した研究が、WHOがまとめている学術誌で最近報告されている。定年後の暮らしと健康との関係を考察…
1月3日、中国の無人探査機が月の裏側への着陸に成功した。世界初の快挙で、2013年の「嫦娥3号」による軟着陸に続き2度目の月着陸となる▼中国は「宇宙強国」を目標に掲げ、日本の宇宙予算をはるかにしのぐ莫大な資金を投入して開発を進めている。米国では予算削減が続いており、日本でも毎年涙ぐましい折衝をして予算を獲得している。現在、無人機であれば数十億円程度(ロケットへの相乗りだともっと安い)で小型衛星を宇…
新年明けましておめでとうございます。今年も読者の皆様方にとって有益な情報をお届けするため、記者全員で取り組みます▼昨年12月に飛び込んできた運営費交付金の配分方法見直しには驚いた。その週の前半、東大の総長との懇談会があり、運営費交付金1割の共通指標での配分は第4期中期目標期間からだと聞いていたからだ▼運営費交付金は18年度実績で約1兆1000億円。そのうち約1000億円が退職金などの特殊要因経費で…
来春は、30年の時を経て「平成」の元号が改められ、新しい時代へと移ることになる。ふり返ると、途中で21世紀に突入した平成は激動の時代であり、社会が急速に大きく変わった▼その変化の大きな要因の1つは、やはりインターネットやモバイル通信などのICTの革新だろう。元年の前年、1988年に、日本ではNTTが世界に先駆けてISDNサービスを開始した▼従来のアナログ電話ではなく、デジタル技術による音声、画像、…
師走も半ばでいろいろと気忙しい頃である。すでに自宅の片付けや大掃除に取り組み、あとは温泉にでも入ってのんびり過ごそうかと思いをめぐらしている人もいるだろう▼ところで、浴槽入浴回数が多いと認知症を防ぐことができ、要介護状態になりにくくなるということが最近の研究で明らかになった。千葉大学などの研究チームが65歳以上の男女約1万4千人を対象に行った調査である。浴槽入浴の頻度を、週0~2回、3~6回、7回…
ゲノム編集は、正確に標的遺伝子を改変する技術として、広く研究に用いられている。ヌクレアーゼとして、ZNF、TALEN、CRISPR/Cas9を用いる手法がある。いずれも05年以降に開発された新しい技術だ。特に汎用性や導入効率、コストなどの優位性により主流になっているCRISPR/Cas9は12年に、細菌のウイルスなどに対する防衛機構の解明を通じて開発された▼開発者らは当初から、同技術の利用は一般的…
地質時代の前期-中期更新世境界(約77万年前~約12万6000年前)を「チバニアン」とするための日本の申請が、第2ステップである第四紀層序小委員会(SQS)の審査を通過した。審査員の6割が通過ラインだったが、約9割の審査員が日本の提案に賛同した▼地質時代は、地球上の岩石をその形成された年代に基づいて区分したもの。それぞれの地質時代の境界を地球上で最もよく示す地層が、GSSP(国際境界模式層断面とポ…
ICT(情報通信技術)を農業分野に導入し、農作業の効率化や生産性向上、農作物の一層の高付加価値などを目指す「スマート農業」の動きが、日本でも進みつつある▼矢野経済研究所が行ったスマート農業市場調査では、その国内市場規模は2017年度で約129億円、2018年度は約147億円の見込みで、2024年度には387億円まで伸び、今後も拡大する予想だ▼市場対象となるのは、栽培支援(農業クラウドなど)、販売支…
よく言われることなのだが「猛暑の年の冬は厳冬になりやすい」という。今年はどうだろうか。気を付けなければならないのが寒さ対策である▼猛暑の時は熱中症、厳冬ならば凍死の危険がある。凍死とは、体熱の放散が熱産生を上回り、体温調節機能の限界を超えて全身の機能障害に陥った結果、死に至ることである。当然ではあるが高温の時に限界を超えれば、熱中症となるわけである。ちよっと意外かもしれないが、一昨年の統計によれば…
11月1日、衛星の開発から12年の歳月をかけて整備された日本の準天頂衛星システムによる世界初のセンチメートル級の衛星測位サービスが開始された。記念式典には安倍首相も駆けつけ、ソサエティ5.0(超スマート社会)の実現を導く技術とシステムを紹介した▼これまで数十㍍単位でずれることもあった米国のGPSの信号を補完するために、衛星「みちびき」が4機、主に日本の上空を飛んでいる。これまで困難だった山や高層ビ…
検証可能な十分な根拠を示さないままに、国立大学の活動について断定的な国際評価を行い、国立大学、さらには我が国の高等教育および科学技術・学術の将来の在り方に関わる極めて重要な政策について、短期間で方向付けを行おうとすることには、重大な危惧を感じざるを得ない。 10月24日の財政制度審議会における財務省の主張に対して、国立大学協会の山極壽一会長(京都大学総長)が出した声明に付記された文書の一部で…
大阪大学が新たに指定国立大学法人の仲間入りをした。国際的な競争環境の中で、世界の有力大学と伍していくとともに、社会や経済の発展に貢献する取り組みの具体的成果を積極的に発信し、大学改革の推進役としての役割が期待される▼指定国立大学になると、出資事業の対象が拡大され、例えば、子会社等による研究成果の活用によるコンサルティング、企業等を対象とした教育プログラムの提供等が実施できるほか、寄付金等の自己収入…
グローバリゼーションの先頭を切って世界中の国々の様々な壁を壊してきたアメリカが、トランプ政権になった途端に保護主義を強め、今度は自ら壁を築き始めた。こんな身勝手はないと思う▼いま盛んに叫ばれているイノベーションもアメリカから始まったが、今後それが世界中に浸透したら、アメリカはまた違う戦略を言い出し始めるのだろうか▼これは、国家戦略というのは他国や世界のためにあるのではない。自国のためのグローバリゼ…
ノーベル生理学・医学賞を京都大学の本庶佑特別教授が受賞した。2年ぶりの快挙で喜ばしい限りである▼免疫をガン治療に応用し、生かすための手がかりを見つけ、新しいタイプの治療薬の開発に結び付け、ガン治療に革命をもたらしたことが評価された。ただ、この喜ばしい話に水を差すわけではないが、近い将来日本がノーベル賞ばかりでなく、世界的な賞から見放される日、受賞者が出なくなる時期がくるのではないかとの懸念が叫ばれ…
今年もノーベル賞が発表され、日本人では本庶佑氏がノーベル生理学・医学賞を受賞した。弊社一同、心よりお祝い申し上げます▼今後、授賞式が例年通り、ノーベルの命日である12月10日に、平和賞はオスロ市庁舎(ノルウェー)、それ以外の4賞はストックホルム・コンサート・ホール(スウェーデン)で開催される。今年は文学賞の延期が決まっているため、例年より1賞少ない授賞式となるとみられる▼ノーベル賞は1901年にア…
AI人材を確保しなければ、米中に追いつくことも難しい。文部科学省は、統合イノベーション戦略推進会議の示したAI戦略案に対応して、人材育成を強化する▼すべての学生がどの学部に進学しても、数理・データサイエンスの基礎的な素養を身につけられるよう、全学的な数理・情報教育を強化する。拠点校とコンソーシアムによる標準カリキュラム・オンライン教材を着実に開発するとともに、協力校の整備による、標準カリキュラムを…
あることにひどく夢中になっているのを「三度の飯より好き」という言葉で表現するようだが、これは、それに匹敵する状態にあることを示す調査結果だ▼ITセキュリティ企業のカスペルスキーが行った、グローバル意識調査「インターネットへの依存度とオフラインが原因のトラブル」の分析結果である▼調査結果では、回答者の29%が「スマホなどインターネットに接続している機器なしで外出するよりも、空腹時に食べ物がない方がま…
アメリカの話題ではあるが、最近ちょっとした驚きが広がった。日本でも波紋を呼びそうな話だ▼全米大学医学部ランキングで常時トップ10に入っているニューヨーク大学医学部が、授業料を全面無償化すると発表したのだ。一部の優秀な学生に対する奨学金でも、経済的に恵まれず苦学している学生への配慮でもない。アメリカでは9月は入学時期でもある。これから入学する学生約100人、在学中の学生400人の全てを対象に授業料が…
9月6日未明に発生した平成30年北海道胆振東部地震で被害に遭われた方々に謹んでお見舞い申し上げます▼今回の地震では、北海道で初めての震度7を記録しただけでなく、北海道電力管内全てで停電が起きた。震源地付近の厚真町では、緑色の山容は一変し、強震で表層が削がれ、茶色の土壌がむき出しになった。その山々の端では住宅が土砂に飲み込まれ多くの人が犠牲になった。大規模な土砂崩れの様子はJAXAの陸域観測技術衛星…
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